増える「和僑」 なぜアフリカを目指すのか?
近ごろ「和僑」という人たちが増えてきているといいます。海外で起業した日本人というニュアンスを含むこの言葉ですが、特にアジアに進出する日本人が多いようです。しかし、海外は当然アジアだけではありません。遠くアフリカに行って起業する人もいます。なぜ彼らは海外、とりわけアフリカを目指したのか、こうした動きにはどういう背景があるのか。東アフリカで日本人の起業家支援を行っている、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小柴巌和さんに聞きました。
「和僑」とは?
海外に住む中国人を指す華僑やインド人の印僑という言葉にはなじみがあっても、「和僑」という言葉はあまり耳にしたことはないかもしれません。 香港和僑会によると、和僑のことを、「日本を離れ、中長期的に異国の地に住み,そこで生計を立てている日本人のこと」と定義付けし、企業の駐在員であったり、独立して仕事している、などの条件は問わないとしています。ただ、メディアでは「海外で起業した日本人」というニュアンスで使われることが多いようです。 このような和僑は最近、増えていると言われます。小柴さんは、このように海外で起業する日本人が増えた背景に、政府の政策の後押しや国内市場の先行き不透明感があると指摘します。 「安倍政権下での『中小企業向けの海外進出支援策』の影響が、かなり大きいと思います。今まで海外に出て行く企業は大手の民間企業がメインでしたが、安倍政権以降、中小企業向けの海外支援の施策をたくさん打つようになりました。また、昨今の株高円安で期待感があるとはいえ、少子高齢化も変わらないし、国内にはマーケットとしての先行き不透明感があります。そういう時に元気な東アジア、東南アジアや、場合によってはアフリカを見たら、30代や40代前半くらいの人は、海外の方が期待感を持って自分のビジネスの絵をイメージできるのではないでしょうか」。
アフリカの将来性
しかし、なぜアフリカなのか。小柴さんは、人口動態やGDPなどの経済指標の伸びからアフリカの将来性の高さを感じる人がいるのでは言います。 国連人口推計2010年版によると、アジアの人口は、2053年の51億4500万人を境に減少に転じるのに対し、アフリカは2050年には22億人、2100年には35億人に達し、それまで人口は増え続ける予測となっています。人口ピラミッドも、年少人口が多い逆三角形の年齢構成で、人口ボーナスが期待できる状況です。 また、経済指標の伸びも顕著です。サハラ砂漠より南の地域である「サブサハラ」の約50か国のGDP総計は、2000年には3400億ドルでしたが、2010年には1兆1000億ドルと飛躍的に伸びました。1人あたりの所得水準(1人あたりGNI)は、2010年に1200ドルという水準で、これは2000年の中国を既に超えています。小柴さんは「アフリカのすべての国ではないが、いくつかの国においては、面白いビジネスが十分でき得る市場環境が整いつつあるのでは」と分析しています。