弁護士のスマホ禁止…やりすぎでは? 今や証拠の確認やメモを取るための重要なツールなのに【「表と裏」の法律知識】
【「表と裏」の法律知識】#260 打ち合わせの際にパソコンやスマホを利用してデータを確認したり、議事録を取ることはもはやスタンダードでしょう。 【写真】「頂き女子“りりちゃん”」から3800万円余りを受け取った罪に問われたホストクラブの元店員 弁護士が、逮捕されている被疑者の方と打ち合わせをする際にも当然同様のニーズがありますが、パソコンやスマホの利用はかなり制約されています。 警察が接見中にスマホの使用を禁止する理由は、証拠隠滅や共犯者との連絡防止、犯罪計画の続行を防ぐためです。スマホが外部との連絡手段として利用されるリスクを警戒しているのです。しかし、この禁止が弁護士にも適用されるのは大きな問題です。弁護士には守秘義務があり、相談内容を外部に漏らすことはありません。また、スマホは弁護士にとって証拠の確認やメモを取るための重要なツールです。一律に使用を禁止することは、被疑者・被告人の十分な防御を受ける権利を奪う危険があります。 もちろん、「ルフィ事件」のような特殊な事例もあります。この事件では、被告人が弁護士のスマホを使い、外部の人物と通話して口止めを受けたとされています。このケースは、弁護士以外の人物との外部連絡が問題であり、接見交通権で保障される「被疑者・被告人と弁護士の相談」とは本質的に異なります。このような特殊な例を一般的な接見交通権の問題と混同してはいけません。 また北海道では、取り調べを受けた女性が「警察に被疑者ノートを無断で持ち去られた」として裁判を起こしました。このノートには弁護士との相談内容が記録されており、札幌地方裁判所はこれを接見交通権や黙秘権の侵害と判断し、北海道に25万円の賠償を命じました。この判決は、被疑者の権利の重要性を改めて示したものです。 スマホの使用禁止や被疑者ノートの没収は、被疑者・被告人の人権や公平な裁判を受ける権利を直接的に脅かす問題です。弁護士が正当に活動できる環境を整え、接見交通権をしっかりと保障することが被疑者・被告人の権利を守るために必要です。特殊なケースに惑わされず、公平な裁判を支える仕組みを冷静に考えることが今求められています。 (髙橋裕樹/弁護士)