きっかけは外国人の同僚の一言。言葉の壁なくし「働きづらさ」を解消へ。「やさしい日本語」を多言語表示に加えた理由
実際に、やさしい日本語をどう活用できるか、多言語対応のメンバーなど社内の様々な部署に相談し、話を進めていった。 本格的なやさしい日本語の切り替え機能導入の前に、まず取り組んだのは、SmartHRの使い方をやさしい日本語で説明する資料や動画作りだ。 外国人スタッフがいるユーザー企業に、すぐにでも使ってもらえるように、やさしい日本語版のマニュアルを作成した。 マニュアルを外国人スタッフが多く在籍する企業に配布すると、反響も増えてきて、実際のプロダクト開発に踏み切った。
プロダクトマーケティングマネージャーを務める島田悠司さんは、「SmartHRは色々なバックグラウンドの人たちが、『業務の入り口』として使うプロダクト」だと話す。 「全ての人たちにとって使いやすいという点は大事にしていきたいとの気持ちがあり、開発メンバーの前向きな協力もあって実装が進んでいきました。世界には何千という数の言語がある中で、現状の多言語への切り替えにやさしい日本語を追加することで、より多くの国の方にSmartHRを使ってもらいやすくなる、ジャンプアップができたのではないかと思います」
用語を「やさしく」する難しさも。外国人ユーザーや同僚にヒアリングし試行錯誤
開発の段階では、アクセシビリティ本部多言語チームの外国出身の同僚のほか、外国人スタッフが働くユーザー企業の協力を得て、ヒアリングやユーザーテストも行った。 近年人数が増えているベトナム人技能実習生にも意見も聞いた。 労務関連の専門的な文章をやさしい日本語にする上では、様々な難しさにも直面した。 通常、やさしい日本語では、難しい単語は理解しやすく言い換える。しかし、日本特有の労務手続きなどの場合、言い換えることによって逆に分かりにくくなってしまうこともあるという。 外国人ユーザーへのヒアリングでは、「年末調整」を言い換えると、逆に分からなかったという当事者の声があり、新たな発見となった。 「年末調整」や「雇用契約書」、「在留カード」などの言葉は、手元にある書類やカード、会社から送られてくるメールにある言葉と照らし合わせることもあるため、ふりがなをつけるなどして、そのまま使用することとした。 「やさしい日本語への書き換えは基本的な方法や推奨事項はあるものの、ルールが柔軟な部分もあり、書き換える人や企業、団体によって少しずつ方法が違います。SmartHRでは、分かりやすさを重視して、ある程度元の言葉を残したり、漢字も使ったりして調整を加えました」(坂巻さん) 同社のやさしい日本語への書き換えの基準としては、日本語能力試験(JLPT)のN4、5レベルで習う語彙や漢字を用いている。 多言語チームの外国人メンバーの声なども参考にしつつ、改善を繰り返した。 年末調整などの一部の機能には今年からインドネシア語を追加し、他の手続き画面などでも年内に反映していく。