陰謀論で母を失った男性「あの時、寄り添えていたら」 極限の不安から飛びついた「真実」の危うさ
陰謀論に陥り、変わってしまった母を「あきらめ」てから3年。陰謀論について学び続けたぺんたんさん(30代)は、「今の知識が当時の自分にあったら――」と、悔いに似た「もしも」も口にする。 【漫画で読む】陰謀論にハマって「母」と断絶 * * * ■誰か答えを教えて テレビは新型コロナウイルスの情報ばかり。怖い、怖い…本当の話がわからない…。 ウイルスはどこで発生したのか。マスクで大丈夫なのか。ワクチンは100%信頼できるのか。世の中はどうなってしまうのか。 誰か答えを教えてほしい……。 コロナ禍のまっただ中で、そんな不安を感じた人は、決して少なくないはずだ。ぺんたんさんの母の心もきっと不安の嵐に襲われていたのだろう。 「想像を絶する、極限の心理状態だったのでしょうね」と、ぺんたんさんは振り返る。 ■陰謀論がもどかしさを埋めた ぺんたんさんは母について、こう分析している。 メディアから流される情報を自分なりに分析し、かみ砕いて理解することはできない。新聞は両論併記が基本だし、テレビにも不安を埋めてくれる100%の解はなく、難しい話ばかりで頭もついていかない。 「どうすればいいのかという不安や、答えを得ることができないもどかしさを埋めるのは、断定的に言い切ってくれる『何か』になる。だから、陰謀論は母の心にすっと入り込んだのだと思います」 ネットで対話した陰謀論者たちと同様に、母は昔から「いい人」だったという。 段ボールに入れられた捨て猫を見つけると、通り過ぎることができず、家で飼ってしまう。 世の中の問題に対し、自分は何ができるかを考え、行動に移さないと気が済まない性格だった。 答えを欲しがるがゆえに、情報に流されやすい部分もあったかもしれない。ある食材を食べるとがんにならない、などと、特に健康に関する情報で、その傾向が強かった。「家族のため」「家族を守りたい」という思いも、強かったように思う。 ぺんたんさんは言う。