従業員の4割が65歳以上の会社 最高齢社員は89歳…内閣府調査で「働けるうちはいつまでも」が36%
「人生100年時代」を迎え、65歳以上で働く人が増えている。現役世代の人口が減少する中、意欲のある元気な高齢者に社会の「支え手」に回ってもらおうと、政府が高齢者雇用を推進していることが背景にある。今後も増加が見込まれる中、待遇の改善や労働災害の防止が課題になっている。(三浦ちひろ) 【図解】ペットボトルのふたはどう開けている? 開け方でわかるフレイルのサイン
「困ったことはありませんか」。10月下旬、ビル設備の保守や清掃を担う会社「セイセイサーバー」(静岡市)の嘱託社員、海野信之さん(70)が、市内のビルで床をモップで拭くパート従業員の女性(75)に声をかけた。
海野さんは週4日、午前9時半から午後5時半まで働き、1日に5か所ほどの清掃現場などを回る。現場管理者として従業員の作業状況を確認し、採用や営業にも携わる。「人とコミュニケーションを取って働けるのが楽しい。体が続く限り仕事を続けたい」と語る。 同社の定年は65歳だが、希望者はその後もずっと働ける。新卒採用は行わず、他社を早期退職した人や、同業の定年退職者を積極的に採用する。従業員約370人のうち4割が65歳以上で、最高齢は89歳だ。
賃金で評価する仕組みや労災防止課題
ビルの管理業務を担当する嘱託社員の高橋誠さん(68)は別の会社を60歳で定年退職し、61歳の時に入社した。「第1種電気工事士」の国家資格を生かせており、「体力のあるうちに収入を得て今後の生活に備えたい」と話す。 長田きみの社長(50)は「若い人の採用は難しく、採用できてもすぐに辞めてしまったが、高齢者は定着率が高い。高齢者がいないと仕事が回らない。貴重な人材だ」と語る。
60代後半の2人に1人
総務省の調査によると、65歳以上で働いている人は2023年時点で914万人に上り、10年前(637万人)の1・4倍となった。65歳以上の4人に1人で、65~69歳に限って見ると2人に1人が働いている。 政府は高年齢者雇用安定法で、企業に対し、社員が65歳まで働けるように定年を引き上げたり、継続雇用したりするよう義務付けている。法改正によって21年からは、70歳までの就業機会の確保を努力義務とした。継続雇用や定年の引き上げなどの方法の中から選べる。 ダイキン工業(大阪)は「事業拡大にはベテランの活躍が重要」として21年から、70歳までの継続雇用制度を導入。すでに継続雇用制度のある明治安田生命保険(東京)は27年度に営業職を除き、現在65歳の定年を70歳に引き上げる予定だ。