従業員の4割が65歳以上の会社 最高齢社員は89歳…内閣府調査で「働けるうちはいつまでも」が36%
企業「70歳まで」は3割
シニアの就労意欲は高い。内閣府の調査(19年度)では、60歳以上で就労中の人(654人)に、何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか尋ねると、36・7%が「働けるうちはいつまでも」と回答し、「70歳」(23・4%)や「75歳」(19・3%)が続いた。 ただ、こうしたニーズに企業は十分に応えられていない。厚生労働省が23年に全国の企業約23万社に行った調査では、65歳まで働ける企業は99・9%だが、70歳まで働けるのは29・7%にとどまる。中小企業は30・3%、大企業では22・8%だった。
法政大の石山恒貴教授(人的資源管理論)によると、日本の企業は従来、シニアに現役時代並みの活躍を期待してこなかった。実際、多くの企業が60歳の定年後、嘱託社員などとして再雇用し、定年前と同じような仕事をしていても、賃金水準を低くしている。人手不足が深刻化する中、高齢者が豊富な知識や経験を生かして活躍できる環境を整えないと生き残れないと警鐘を鳴らす。 石山教授は「仕事への熱意は加齢によって一律に低下するわけではない。年齢にかかわらず、業務内容や働きぶりに応じて賃金で評価し、やる気を引き出すことが重要だ」と指摘する。
身体機能低下 事故に遭いやすく
働くシニアが労災に遭うケースも増えている。厚生労働省によると、60歳以上で仕事中の事故で亡くなったり、4日以上休むけがをしたりした人は昨年、3万9702人(うち死亡は290人)に上り、8年連続で過去最多を更新した。 一般的に年齢を重ねるほど身体機能が低下し、つまずいたり、すべったりして転倒しやすくなる。60歳以上は30代と比べて男性で約2倍、女性で約4倍、労災に遭いやすい。 最も多いのが「転倒」(40・9%)で、「墜落・転落」(16・7%)、「動作の反動・無理な動作」(11・2%)が続く。 人材派遣会社「高齢社」(東京)の村関不三夫社長(68)は「安心して働けるように労災防止は欠かせない。体力に見合った勤務日数や環境で無理をせず、長く働けることが大事だ」と語る。 同社では、約400人の高齢者が、倉庫管理やレンタカーの受け付けなどの仕事を複数人で分かち合って働く。一人ひとりの労働時間を短くするためだ。 同社の担当者が、働く環境を実際に確認し、重い荷物を無理に持ち上げることのないよう配慮してほしい、などと派遣先に伝える。定期的に本人に健康状態を聞き取るという。(2024年11月12日付の読売新聞朝刊に掲載された記事です)