室屋成がドイツで勝ち取った地位。欧州の地で“若くはない外国籍選手”が生き抜く術とは?
ファンとチームと家族と自分。そして尊敬する存在
さまざまな経験を積み重ねていくなかで、前述のキール戦後にはシーズンを重ねるごとに海外で長くプレーすることの難しさを実感していることを話してくれた。 2023―24シーズンには欧州で10年以上活躍し続けた元日本代表キャプテンの長谷部誠と元日本代表ストライカーの岡崎慎司が現役引退を表明。彼らのように長く活躍し、クラブからの寵愛を受けてきた選手に対して、現役選手として感じることがたくさんあるのだという。 「やっぱり、海外にいればいるほど、長くいるっていうのがどれぐらい難しいことかを実感しますね。僕らはあくまで外国人なので。そういった意味では長谷部選手も、岡崎選手も、本当にすごい方たち。本当に尊敬します。特に最近はどのクラブでも若い選手がどんどん使われるし、次々と新しい選手を取ってくる。年齢的な部分で、同じチームにいつづけるというのは、より難しくなってきていると思うんです。入れ替わりも多いですから。そういった意味でも長くやれるって本当にすごいことだと思います」 そんな室屋にとって大きな存在となっているのは家族。 「もちろんそうです。やっぱり一人じゃなくて、日本語を話せる環境というか、家族がそばにいるっていうのは本当に違いますね。すごく大きいです」 シーズン最後のホームゲームでは選手が家族とともにファンに挨拶をしたりする。室屋の隣にも息子の姿があった。手をつないでミックスゾーンに現れると、息子はインタビューを受ける父親を「おぉ!」と見上げる。そんな息子をにっこり見つめ返して、「ちょっと待っていてね」と優しく言葉をかけていた。 ファンとチームと家族と自分。自身のパフォーマンスを最大限発揮するための確かなベースと支えが室屋にはある。 <了>
文=中野吉之伴