室屋成がドイツで勝ち取った地位。欧州の地で“若くはない外国籍選手”が生き抜く術とは?
「28歳の外国籍選手」が契約延長することの難しさ
一度「ハノーファーで1部にチャレンジしたい?」とストレートに質問をぶつけてみたことがある。あれは昨季最終節、ホームでのキール戦後のミックスゾーンだった。 「それが一番。サポーターからもすごい愛情を持って、応援してもらえている。そういった意味でもハノーファーで1部へ上がれたら一番いいですね。それに2部でもサポーターがたくさん入っているこういう環境の中でプレーできるのはすごく面白いし、いい経験ができています」 2023―24シーズンのハノーファーの平均集客数は4万近くになる。キール戦では4万9000人の超満員。どれだけ多くの人がクラブを愛し、アイデンティティを抱き、毎週末力の限りの声援を送っていることか。 「ホームもそうですし、アウェイでも本当にたくさんのサポーターが来るんです。そういう熱い後押しを感じながらプレーするというのが一番自分の中では大事なんで」 厚い信頼はファンからだけではない。首脳陣からも同様だ。2022年12月の契約延長時にスポーツダイレクターのマルクス・マンは「セイは、スピードと運動量、そして素晴らしいメンタリティを持った選手だ。どんな時でもチームのために100%のプレーを見せてくれる。オフェンシブプレーでさらなる成長を果たし、彼が今後もハノーファーに残ってくれることをうれしく思う」とコメントを残しているが、28歳の外国籍選手が契約延長するのは簡単なことでも、当たり前のことでもない。 まだ伸びしろの多い若手選手とは違う。飛躍的な成長が期待される立ち位置にいるわけではないので、チームの勝利に高い確率で貢献できるという確かな信頼がなければ首脳陣は首を縦には振らない。プレーヤーとしてのクオリティだけではなく、人間性や日常からの取り組み、コミュニケーション能力などあらゆることが精査される。レギュラークラスの選手でも契約が延長されずに、新しい所属先を探さざるをえない例は山ほどあるのだ。 加入してからコンスタントに出場を重ね、ファンやクラブ関係者からの絶大な信頼を勝ち得ているのは、室屋が現状維持ではなく、常に成長し続けていることの表れだ。