「犯罪者が愛する国」武器密売人や麻薬王がドバイの物件を買いあさる理由 米
米ローリングストーン誌の取材によれば、新たに流出したドバイの不動産記録から、同国内に潜伏する怪しい人物が判明した。 【写真を見る】「そんな抜け道が…?」囚人仲間が撮影した脱獄の瞬間 違法な武器製造工場の建設には金がかかる。拷問罪で有罪判決を受けたロス・ロッジョは、イラクのクルド人自治区に工場を建設し、のちに民兵組織の手に渡ることになる銃を製造した際、大金が必要になった。そこでクルド人の大富豪の息子ザーリャ・ファルークから資金を調達した。 事件については以前、ローリングストーン誌が詳しく報道した通りだ。現在ロッジョは服役中だが、ファルークの居場所についてはつい最近まで謎に包まれていた。 ファルークは過去に、イラク北部で影響力を持つクルド人の政治家と手を組んでいた。政治家が失墜すると、その影響はファルークにも及んだ。ロッジョとファルークが建設した違法武器庫も閉鎖された。 現在ファルークは(ローリングストーン誌のコメント取材申請に対し、返答はなかった)イラク北部全域でお尋ね者の身だ。2人のクルド人情報筋によると、イラクのクルド人自治区では警備会社を悪用した罪で逮捕状が出ている。ロッジョが連邦起訴されたことをふまえると、アメリカ当局もファルークに目を付けていると思われる。 最新データを見ると、クルド系武器密売王の逃亡生活はそこまで苦しくないことがうかがえる。イラクを出たファルークは、その後ドバイの高級ヴィラに潜伏しているようだ。中東における金融の中心地で、世界の大富豪の遊び場としても知られるアラブ首長国連邦ドバイには、租税回避地という悪い評判もつきまとう。違法な金が集まり、マネーロンダリングの温床で、しばしば不動産を介して資金洗浄が行われている。ファルークのような人間にとっては格好の逃亡先でもある。 ワシントンDCを拠点とするNPO団体「Center for Advanced Defense Studies(C4ADS)」は、ノルウェーのメディア「E24」とNPO団体「組織犯罪・汚職報道プロジェクト」の協力のもとドバイの不動産記録を入手し、その後世界70以上のメディア企業に公開。国際報道プロジェクト「Dubai Unlocked」として公表されたその記録から、ドバイの統治者にちなんで名づけられた高級地区、モハメッド・ビンラシッド・シティにファルークが家を購入していたことが判明した。 ファルークの新たな隠れ家は、人工ラグーンと緑豊かな空間で有名な場所だ。広報資料には「都市の中の都市」と謳われており、あらゆるサービスが簡単に手に入る。 ドバイに潜伏する怪しい人物は大勢いる。記事作成にあたりローリングストーン誌にご協力いただいたNPO団体「Government Accountability Project」は、ドバイ土地局や公営サービス業者から流出したデータを検証。その結果、2020~2022年を中心に数万件近いドバイの物件の所有者や用途の詳細が判明し、おびただしい数の容疑者、犯罪者、国際制裁の対象者、政治犯の名前が記載されていた。 アラブ首長国連邦(UAE)の政府職員はDubai Unlockedプロジェクト代表の質問に、「UAEは国際金融システムの正当性保護という役割を真摯に果たしています」と返答した。「現在進行中の国際犯罪者の追跡でも、UAEは国際当局と密に連携し、あらゆる違法な金の流れを阻止・抑制しています。UAEはこうした努力や行動をこれまで以上に重ね、今後も継続していく所存です」。