「犯罪者が愛する国」武器密売人や麻薬王がドバイの物件を買いあさる理由 米
アラブ首長国連邦は警察当局のブラックホールです
もう1人、Dubai Unlockedプロジェクトのデータに挙がっているのがダニーロ・フンハオ・サンタナ・グヴェイアだ。ダニーロ・ドバイアーノ名義でブラジル音楽「セルタネージャ」のミュージシャンとして活動しているが、ビットコインのねずみ講詐欺容疑でブラジル当局から指名手配されている。 その他1980年代にサダム・フセイン政権下で核兵器開発を統括したジャファ・ディア・ジャファ氏や、ミャンマー軍事政権に武器を供給したとしてアメリカ財務省から制裁を科された実業家のナイン・トゥト・アウン氏、プーチン大統領のお抱え建築家で、マネーロンダリングと脱税容疑でイタリア当局から指名手配されているランフランコ・チリッコ氏もドバイの住民だ。 記事に登場するドバイの物件の所有者に、参加メディアを代表してDubai Unlockedプロジェクトは詳しいコメントを求めたが、返答があったのはジャファー氏のみだった。「私がドバイの不動産投資を決めた理由は、ドバイに居住し、かつこうした投資は満足のいくリターンを得られるからだ」というのがジャファー氏の返答だった。 だが国際当局の手が届かないドバイは、ファルークも含むデータに記載された大勢の目には魅力的と映るようだ。ジョージタウン大学で汚職と違法取引を研究するジョディ・ヴィットーリ教授は、「アラブ首長国連邦は警察当局のブラックホールです」と語る。 グヴェイアは2019年、ブラジルの放送局Globoとのインタビューで「強制送還を恐れていないといえば嘘になる」と語った。だがあれから5年、彼はいまだに自由の身だ。 アラブ首長国連邦はごく最近まで、各国と身柄引き渡し協定を結んでいなかった。そのため世界中からお尋ね者がこぞって集まった。だが協定を締結したとしても、身柄引き渡しは依然として困難だ。弁護士で、法律支援団体「Detained in Dubai」を率いる人権活動家のラディア・スターリング氏いわく、「身柄引き渡しにメリットを感じなければ、アラブ首長国が指名手配犯を差し出すことはないだろう」。 おそらくファルークもロッジョの逮捕で警戒したのだろう――同じ穴のムジナになってたまるかと、予防策を講じていたようだ。
ZACK KOPPLIN