総理番記者が「石破構文」を徹底分析…国会答弁約22万語から見えた「3つの特徴」 今年の政権運営のポイントとは?
■特徴②「石破カラー」どこ? 積極的「政策打ち出し」見えず
答弁分析から見える2つ目の特徴は、攻めの“政策議論”が見えないことだ。石破首相は「地方創生」「防災庁」など、政権の看板政策があるにもかかわらず、臨時国会の答弁からはその「打ち出し」が見えなかった。これは、その前年の岸田前首相の答弁と比較すると、違いが明確になる。
2023年、同時期に行われた臨時国会の予算委員会での岸田首相(当時)の答弁と比較した。上の図の通り、岸田前首相の答弁を“ひと目”で見ると「経済対策」「賃上げ」といった言葉が浮かび上がった。どれも、岸田政権が力をいれた「政策」だ。 一方、石破首相の国会答弁からはこうした「政策の打ち出し」の語句はほとんど浮かび上がらなかった。なぜなのか?ある政府関係者は「政治とカネなどで防戦一方で、積極的な打ち出しができなかった」と振り返る。 また、私が総理番として感じたことだが、石破首相の答弁は一度相手の発言・意見を受け止めることから始める。首相は答弁で「おっしゃる通り」「参考になる」など、相手へのリスペクトを示す言葉を多用していた。ある首相周辺は「少数与党だから、相手の意見を受け止めるだけで、自分の意見を発言するまでに至らない場面が多かった」と指摘する。また、別の政府関係者は「予算成立に向けた対立点を作らないことが大切。事故を起こさない。なるべく穏便にやっていくことが大事」とも語った。
■特徴③「石破構文」野党が批判…首相も改善を意識?
石破首相の答弁の3つ目の特徴は「石破構文」と批判を受けた、石破首相ならではの“話法”だ。12月16日、日本維新の会の松沢議員が「石破構文を聞きたいのではない」と首相に詰め寄った。「石破構文」とは、「丁寧に話すけど、質問に正面から答えない」(立憲幹部)と野党が揶揄する首相の答弁スタイル。この松沢氏の質問に首相自身も「何度も言っているが、またそれが石破構文になる危険性もあるので…」と、自嘲気味に答弁。首相自身も「石破構文」との批判を意識している場面だった。 私が首相らしさを感じたもう1つの場面があった。12月11日、相手は国民民主党の新人、当選1回・29歳の橋本幹彦議員が初めて質問に立った際の答弁だ。歳の差38歳の若手議員に対して首相はこう話し始めた。 「若いというのは良いことだなあと思いながら(話を)承っておったところでございます。そうなんだ、バブル知らないんですね」 これに、委員会室内では与野党問わず笑いが起きた。ゆったりとした語り口調で、相手に目線を揃える事を意識しながら答弁を始めた首相。私は「通り一辺倒でなく、議論の最中でも会話を楽しむ首相らしいシーンだ」と感じた。 首相周辺も「相手が新人議員であれ、真剣に議論を聞く首相の姿勢の現れ」と指摘。一方、ある立憲幹部は「石破首相の答弁は丁寧だけど、中身がない。それが石破構文だ」別の野党幹部は「姿勢は謙虚でも、質問に正面から答える姿勢は全くない」と批判した。