リベラルと保守の対立なのか?――米国「人工妊娠中絶論争」の歴史といま
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「これから成人する女の子たちは、その母親や祖母より権利を制限された、初めての世代になる」――2022年6月24日、米国 連邦最高裁 が、人工妊娠中絶の権利を 憲法 上で保障した1973年のロー対ウェイド判決を覆したことの衝撃を言い表した言葉である。ロー判決が覆った結果、各州は自由に中絶を禁止したり制限したりできるようになり、南部テキサス州など中絶をほぼ全面禁止する州や、厳しい中絶制限を設ける州が続々とでてきている。大半は共和党地盤の保守州だ。 中間選挙 では与党は大幅に議席を減らすのが常である。2022年の中間選挙も、上下院で野党の共和党が多数派を奪還するというのが大半の予測だった。しかし、ロー判決が破棄され、中絶問題が主要な論点として浮上したことが民主党支持者の投票意欲をかきたて、特に上院については接戦が見込まれている。非営利団体カイザー・ファミリー財団が9月に調査したところ、有権者の半数、民主党支持者では7割近くが、6月の最高裁判決を契機に、今年の選挙で投票する意欲が高まったと回答している [1] 。 米国における中絶論争は、胎児の命の擁護を掲げて中絶に反対する「プロライフ」派と、身体に関する女性の自己決定権として中絶を擁護する「プロチョイス」派という2つの立場の戦いとして描かれる。前者は共和党支持者に多く、後者は民主党支持者に多いため、党派対立の様相を帯びる。しかしそれは多分に誇張された対立であることをまず踏まえる必要がある。民主党支持者のみならず、共和党支持者でも、極端な中絶制限を支持しない人は過半数である。
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三牧聖子