原発関連株に光、震災事故乗り越え再稼働機運-電力需要の拡大期待も
(ブルームバーグ): 行き過ぎた円安への警戒などから足元で停滞感が漂う日本株市場で、電力会社など原発関連株が好調だ。原子力発電所の再稼働に向けた動きに進展が見られるほか、国内で半導体工場の建設や世界的な情報技術(IT)企業によるデータセンターの投資計画が相次ぎ、将来的な電力需要の増加が期待されている。
東京電力ホールディングスや関西電力などを含むTOPIX電気・ガス業指数は過去3カ月で21%上昇(9日時点)し、東証33業種の上昇率ランキングでは保険、非鉄金属に次ぐ3位。6.7%上昇した東証株価指数(TOPIX)を大きくアウトパフォームしている。電気・ガスの上昇率は、対ドルで34年ぶりの円安となった為替相場の恩恵を業績面で受ける輸送用機器や電機の3-4倍に達する。
フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッドは、円安が日本株の支えにはなっておらず、「次のカタリストがどこに移っているか腹の探り合いをしている」と指摘。投資家がインデックスに勝つためには原子力のような小さなテーマも投資対象になり得ると話した。
ウクライナへ侵攻したロシアへの制裁や中東情勢の緊迫化で原油価格が高止まりする中、エネルギー燃料を輸入に頼る日本が電力の安定供給と温室効果ガス排出量の削減を同時に目指すには原発の再稼働は避けて通れない問題だ。
2011年の東日本大震災時に起きた福島第1原発の事故以来、規制を強化した日本の原子力行政は原発再稼働への歩みを慎重に進めてきたが、エネルギー価格が高騰した22年ごろから岸田政権が再稼働や次世代原発の開発へかじを切り始め、ここ2年ほどの電力株の上昇につながっている。
加えて日本と米国、韓国、台湾の「チップ4」による半導体サプライチェーン強化の流れで、国内で半導体工場の建設が相次いでいることも安定的な電力供給への期待が高まった要因の一つだ。
過去3カ月で株価が2倍近くになった北海道電力が電気・ガス指数構成銘柄の中で上昇率トップ。12年から停止する泊原発3号機の再稼働に向けた準備が進むほか、次世代半導体の開発を目指すラピダスが北海道千歳市に工場を建設しており、原発再稼働を後押しするとの期待が広がっている。