「名画の感想を述べるのは日本人だけ」 西洋美術の正しい鑑賞方法とは?
それでも見たい、来日美術展はどう楽しむ?
それでもやはり、来日した美術品を見に出かけたい。それにはまず、西洋美術史の概略を学んでから美術展に出かけることが大前提となる。木村さんがおすすめする鑑賞方法とは? 「一度見に行って、その美術展が気に入ったら、図録を買ってじっくり読んでから、もう一度行ってみてください。背景を学んでから再度訪れると、見方も理解もまったく違うものになるはずです」 今年、日本にやってくる展覧会でとくにおすすめは何か? 「まずは『プラド美術館展』ですね。ディエゴ・ベラスケス(1599-1660)の7点をはじめ、彼が影響を受けたとされるティツィアーノ、ルーベンスなどの作品も見られます。また、彼は宮廷画家として美術品を管理していた立場からローマに発注したクロード・ロランの作品などが来ています。もともとはヨーロッパ人ですら、見ることがかなわなかった門外不出のロイヤルコレクションでして、見きれないくらいの収蔵品の中から厳選された作品がやってきていますので、おすすめです。フランス風景画の歴史を体系的に学ぶには『プーシキン美術館展』がいいですね」 そして機会があれば、常設展示の充実している海外の美術館にもぜひ足を運んでほしい。 「海外の美術館は建物や空間そのものもすばらしいですね。ガイドツアーを有効に使って鑑賞するのもオススメです。ちなみに、日本で美術史の流れを学ぶには、徳島県の大塚国際美術館がすばらしいと思います」 (取材・文・写真:小杉聡子) ■木村泰司(きむら・たいじ) 西洋美術史家。1966年生まれ。米国カリフォルニア大学バークレー校で美術史学士号を修めた後、ロンドンサザビーズの美術教養講座にてWORK OF ART修了。東京・名古屋・大阪などで年間100回ほどの講演・セミナーを行っている。著書に『名画の言い分』『巨匠たちの迷宮』『印象派という革命』(以上集英社)、『名画は嘘をつく』シリーズ(大和書房)、『美女たちの西洋美術史 肖像画は語る』(光文社)、『おしゃべりな名画』(ベストセラーズ)、『西洋美術史を変えた名画150』(辰巳出版)、『世界のビジネスエリートが身につける教養 「西洋美術史」』(ダイヤモンド社)などがある。