マイナ保険証になると、どんないいことがあるの?【40代、50代・薬と上手に付き合う方法⑫】
2024年の秋から、現在使われている健康保険証の廃止、マイナンバーカードへの一本化が本格始動した。このマイナ保険証になるとどんなことが変わるのだろうか? メリットとデメリットについて、薬剤師の鈴木素邦(そほう)さんに伺った。
情報の一本化で効率アップ&重複投薬のリスク減
いよいよマイナ保険証が本格的に始動し、2024年12月2日から今までの健康保険証は新規に発行されなくなる。 とはいえ、すでに発行されている健康保険証は、最長1年間(※)は使用でき、マイナンバーカードをまだ取得していない場合は、「資格確認書」が交付され、それを医療機関で提示すれば今まで通りに受診することができる。 ※有効期限が2025(令和7)年12月1日以前に切れる場合は、その有効期限まで。 将来、健康保険証、お薬手帳、各クリニックの診察券がマイナ保険証に集約される予定だ。こうなると、どんなメリットがあるのだろうか? 「マイナ保険証になる一番のメリットは、医療機関や薬局などが患者さんの病歴や薬の情報を共有できることです。 患者さんの同意を得たうえで、医師や薬剤師向けの処方箋データの総合ポータルから、患者さんの過去の病歴やアレルギーの有無、過去1カ月~5年の間に処方・調剤された薬の情報、特定健診の情報(血液検査や尿検査などの結果)を知ることができます。 すると、より的確にその人に合った薬が処方できます。さらに皮膚科や内科など同時期に複数の医療機関を受診して薬を処方されている場合、薬の重複や飲み合わせへの配慮ができ、安全性が高まります。 さらに、マイナ保険証は電子処方箋と相性がよいというメリットがあります。電子処方箋のデータであれば、今まで見ることができなかった過去1カ月以内の情報も読み取れるため、直近の服用履歴についても確認できます。そのため、より質の高い医療を受けることができます」(鈴木さん) 【電子処方箋の仕組み】 紙で発行していた処方箋をデジタル化し、病院と薬局がオンラインで情報をやりとりする仕組み。医師が処方した薬の情報は、サーバーを介して薬剤師が取得でき、それに合わせて調剤する。サーバーに登録された情報は、患者の同意があれば、複数の病院や薬局にまたがる情報も確認できる(※)。 ※2025年3月までにすべての医療機関や薬局への導入を目指している。 確かに、医師と薬剤師間で情報が共有できるのはとても便利。これなら、うっかりお薬手帳を忘れても、自己申告を忘れても安心だ。 ほかにはどんなメリットがあるのだろうか? 簡単にまとめてみた。 【マイナ保険証のメリット】 ●重複投薬や体の状態に合わない薬の回避 ●転職や退職、引っ越しなどの変更に伴う再登録は不要 ただし、健康保険組合や共済組合などへの加入の届け出は必要。 ●医療機関の窓口での限度額以上の一時支払いは不要 急な入院や高額な薬で多額の支出が必要なときに、立て替え支払いをしなくてよいので便利。 ●将来、各クリニックの診察券が不要になる この取り組みは始まったばかり。診察券がなくても対応できるように医療機関に呼びかけているが、まだ対応しているところは少ないのが現状だ。 これらがすべてスムーズに回っていけば、とても効率よく、よい医療につながると思う。一方、デメリットとして少し懸念が残るのは、まだ始まったばかりのことなので、不具合が生じたり、他人の処方内容を間違えて紐づけられる可能性がある点だ。 実際にそうした事例が発生している。飲んではいけない薬を飲んでしまうと、命にかかわることも。自分の身は自分で守る気持ちを持つことが大事だ。いつもと違う薬ではないか自分で確認する習慣をつけよう。