なぜ鉄道の「車内販売」は次々廃止されるのか? コスト削減と利便性のジレンマ、狭間で揺れるサービスの行方とは
車内販売廃止で消える楽しみ
近年、鉄道車内での販売サービスが次々に廃止されている。特に、新幹線や特急列車などの長距離列車では、自動販売機すら設置されないケースが増えてきている。 【画像】「えぇぇぇぇ…!」これが「60年前の米原駅」だ! 画像で見る(11枚) これには、運営コストの削減や効率化を目指す企業側の意図があると考えられる。コストを抑えるため、車内でのワゴン販売や自販機の撤去が進み、鉄道業界の経済的な側面が色濃く反映されている。 しかし、その一方で、消費者からは 「車内での楽しみが減った」 「飲み物を買えなくて困った」 といった不満の声も広がっている。このような一斉廃止の流れに懸念を示す意見も少なくない。特に、長時間の移動中に飲料を確保できないことが、緊急時の対応に影響を与えるのではないかという指摘もある。 この現状において、車内販売の廃止が適切な流れなのか、社会的・経済的な観点から再考する必要がある。本稿では、その点について検討していきたい。
長距離列車の快適さ、消失の危機
筆者(高山麻里、鉄道政策リサーチャー)は、車内販売の廃止には 「経済的な正当性がある」 と考えている。確かに、昼間に長距離の優等列車に乗っても、1車両で誰も買わない場面を何度も見てきた。販売が多く見込めるのは、平日朝夕の通勤時間帯や休日の観光利用が多い時間帯に限られる。 ・販売員の人件費 ・商品の仕入れ ・ワゴンの購入/維持 など、さまざまなコストがかかる。一方で、車内販売や自動販売機の廃止は、消費者のニーズを無視しているようにも感じるため、望ましくない状況だ。鉄道会社や関連企業が経営効率を重視するのは理解できるが、サービスの質を維持しつつ 「消費者の利便性を損なわない方法」 を考えることも重要だ。特に長距離列車での車内販売や自動販売機の廃止は、 ・車内での楽しみ ・移動の快適さ を低下させる可能性がある。飲み物を確保する手段がなくなることは乗客にとって不便で、長時間の移動中に体調不良のリスクも増える。さらに、優等列車の多くは窓が開かないため、停電などの緊急時には 「暑さ対策」 として水分を確保する手段も必要となる。 このような状況では、鉄道会社は効率化とサービス維持のバランスを取るべきだ。鉄道ビジネスは、サービスを提供する側とそれを享受する生活者があって初めて成り立つものである。こうした視点から考えると、 ・無人の販売機 ・事前予約制の飲食物のサービス など、別の形でのサービス提供が望ましいのではないか。