なぜ鉄道の「車内販売」は次々廃止されるのか? コスト削減と利便性のジレンマ、狭間で揺れるサービスの行方とは
筆者の提案に反対する意見
車内販売の廃止に賛成する意見も多く存在する。その主な理由は以下の四つだ。 ・コスト削減の観点 ・流動性と利便性の観点 ・ビジネス利用促進の観点 ・その他の観点 ひとつずつ説明しよう。 ●コスト削減の観点 車内販売を維持するためには、人件費や物流コストがかかる。近年ではどの業界も人手不足で、販売スタッフの人件費を削減することは難しい。また、物流コストも運転士の安定的な確保のために減らすことができない。 車内で販売される商品の価格が高くなることが多いため、わざわざ売りに来る必要はないと考える人も多い。駅で事前に購入すれば済むし、何度も音や声を出して販売を促す必要もないという意見がある。 特に乗車率が低い列車では、売り上げが安定せず、運営が非効率になることが多い。そのため、鉄道会社や販売担当の関係者は、経済的に車内販売を維持するのが難しいと感じており、車販準備室を座席や荷物スペースに転用すべきだという意見も出ている。 ●流動性と利便性の観点 車内販売を廃止し、自動販売機も設置しないことで、かえって利便性が向上する場合もある。特に多客時には、乗客がスムーズに移動できることが重要だという意見がある。 近年では、鉄道駅やその周辺のショップで事前に飲料や食事を購入することが容易になっており、これを促進すれば車内の混雑を防ぎ、快適性を向上させることができるという声も多い。 さらに、ワゴンの音が気になる人もおり、車内販売を廃止することで静かな空間が保たれるというメリットがある。また、駅構内に多くの自動販売機が設置されているため、乗客は駅で飲み物を購入できる環境が整っており、車内で提供する必要はないとする意見もある。
グリーン車専用販売の格差論争
残りは「ビジネス利用促進の観点」「その他の観点」のふたつだ。説明を続けよう。 ●ビジネス利用促進の観点 最近では、東海道・山陽新幹線のS-Work車両のように、車内で仕事ができる環境を提供する車両も登場している。新型コロナの影響でテレワークが普及し、インターネットの技術向上により車内でも快適に仕事ができるようになった。 そんななかで、車内販売のワゴンの音やスタッフのかけ声が気になるという意見もある。売り込み型の車内販売は、今や時代に合わないと考える人も増えている。 ●その他の観点 東海道新幹線では現在、グリーン車で注文方式の車内販売が行われており、山陽新幹線ではグリーン車のみでワゴンによる車内販売が行われている。このように、新大阪駅を境に車内販売の方式が変わることがある。このグリーン車専用の販売方式を 「差別的だ」 「格差を感じさせる」 と感じる人もいれば、逆にグリーン車の静かな空間をお金で購入しているため、車内販売が廃止されても問題ないという声もある。