バブルの象徴、狂乱のディスコ「ジュリアナ東京」跡地はどうなった? かつての倉庫街に押し寄せる巨額の投資マネー
▽タワーマンション建設ラッシュへ 芝浦地区はこの頃、物流の構造変化に伴って港湾機能が必要なくなり、レジャー施設や企業のオフィスを中心とした都市機能に切り替える計画が進みつつあった。 それを後押ししたのが、2013年ごろから押し寄せた巨額の投資マネーだ。日銀が当時の黒田東彦総裁の下で大規模な金融緩和政策を開始した時期と重なる。住宅ローン金利は歴史的な低水準に押し下げられ、市場にあふれた巨額の投資マネーは不動産開発へと向かった。地元でビルを所有する男性が「土地代が上がり始めたのはここ10年くらい前からではないか」と振り返るように、住民の実感とも符合する。 ウオーターフロント再開発と題した東京湾岸地区開発の目玉の一つとなったのが、芝浦アイランドと呼ばれる芝浦4丁目の一角だ。四方を海に囲まれた人工島にタワーマンションが林立し、人口が1万人増えた。タワーマンションの建設ラッシュはその後、周辺地域に広がった。
ジュリアナ東京のあった芝浦1丁目の現在の人口は約3600人。そのうちタワーマンションの住民は約2千人と過半数を占めるという。投資用のワンルームマンションも10棟ほどある。芝浦周辺の2022年の路線価は10年前と比べると7割余り上がった。 JR田町駅は東京駅まで電車で約10分。羽田空港までも30分程度の距離だ。住宅購入サイトによると、マンション価格は70平方メートルのファミリー向けの部屋だと1億円を優に上回る。だが通勤に便利な立地は、パワーカップルと呼ばれる高収入の共働き夫婦から支持を集め、住宅ローンの低金利の恩恵もあって人気は根強い。 人口の急増で2022年4月には小学校が新設された。地下1階、地上9階建てのビルで、校庭は屋上にある。地区の二つの小学校を合わせると児童数は約1400人。建築中のマンションもあり、児童数はまだ増えそうだという。 JR田町駅周辺は広い公園が整備され、病院やスーパーもできた。芝浦1丁目町会会長の岡田祥男さんは「住民の声を聞きながら開発が進み、非常に住みやすい場所になった。こんな街並みになるとはバブル当時は思い描けなかった」と話す。