なぜオリックス・中嶋と阪神・岡田は歴史に残る名将になり、楽天・今江は解任されたのか…「チームを日本一にする」監督の”意外な条件”
日本一の監督の条件
村瀬:勝利のために全力を尽くす監督なのに、後年は選手の気持ちが中嶋さんと呼応していない場面が見られた。それが残念ですよね。 長谷川:そうそう。監督が審判に真剣に抗議しているのに、ベンチの中で選手がヘラヘラ笑っていたりね。 村瀬:結局、今年は5位に終わりましたが、中嶋監督は退任に際して「優勝後のチーム内の気の緩みが改善されなかった」と漏らしていました。あの名将でさえ「令和の緩さ」に悩まされたのかと、ショックを受けました。 長谷川:私にはひとつ、監督に関する持論があります。それは、チームを日本一にするのは「外様の厳しい監督」、もしくは「生え抜きの優しい監督」というもの。ヤクルトの場合だと、前者が広岡達朗、野村克也。後者が若松勉、真中満、高津臣吾です。理想は「生え抜きで厳しい監督」なんですけど、それができる人は少ない。その貴重な存在が、中嶋監督であり、岡田監督でした。 岡田監督のもと、阪神は'23年に日本一に輝きましたが、私は常々「厳しい監督だな」と思っていました。成績は好調なのに、佐藤(輝明)選手らに対して辛辣な言葉を投げる。しかも、スポーツ紙などを通じて、という古いやり方で。 村瀬:それまでの阪神に流れていた緩い空気を一変させたのは間違いありませんよね。 長谷川:前任の矢野燿大監督が朗らかすぎましたからね。キャンプでは「予祝」といって、優勝した時のことを想定した胴上げの練習をしたり、ホームランを打った選手にメダルをかけていましたから。 村瀬:矢野阪神って強くても怖くなかったんですよね。だから、岡田さんは阪神に怖さを取り戻すため、監督就任後に「予祝」をすぐに廃止しました。また、調子が良くとも天狗になりそうな選手はシーズン中に二軍に落としていた。あれも怖さのひとつでしたね。 長谷川:選手の慢心をおさえる一方で、一時的に主力を休ませ、戦力の温存にもつながったんですよ。こうした選手の育て方・チームの作り方は、経験値の高い岡田監督にしかできない。 村瀬:今年8月、主力の一人である村上(頌樹)選手が中日戦で自己ワーストの5四球を与えると、いきなり二軍落ちとなりました。お前たちの代わりはいるよ、という強烈なメッセージ。ただ、立浪監督と違うところは、その意図が選手たちにも伝わるんです。これぞ名将の力。結局、村上はシーズン中に一軍復帰。意味のある「懲罰」となりました。