FRB利下げ継続後押しも-大幅値上げの日々は終焉、価格転嫁困難に
(ブルームバーグ): ホビー・ワークス社のマイケル・ブレイ社長は、顧客が値上げに飽き飽きしていると分かっており、実際に選ばれるであろう値段のそれほど高くない製品を仕入れている。メリーランド州ロックビルとローレルにある店舗では、列車の模型やリモコンカー、ドローンといった製品の価格上昇を転嫁できるコロナ禍の日々は既に終わった。
「消費者はある意味限界に来ており、値上げはできない。これらの新しい小型のエントリーレベル商品は、今の環境で消費者ニーズに合うと考えられる価格帯であり、その意味で力を入れている」とブレイ社長は話す。
全米のブレイ氏が経営するような企業は、値上げする能力がますます制限されているようだ。価格決定力の低下は、2年前のピークから既にかなり落ち着いてきたインフレの鈍化を促すはずだ。
9月の消費者物価指数(CPI)のように今後のインフレ指標が上下に振れることがあっても、利下げ継続に向け、米連邦準備制度の当局者に安心感を与えることにつながると期待される。
ウェルズ・ファーゴのシニアエコノミスト、サラ・ハウス氏は「企業の価格転嫁がより難しくなったことは、連邦準備制度の金融引き締めスタンスがインフレ抑制に効果を発揮してきた様子を示す兆候だ。インフレとの闘いを完了しようとする当局者らが、注視すべき重要な要素になるだろう」と指摘する。
9月に金融緩和サイクルをスタートさせた際、通常より大幅な0.5ポイント利下げを選択した連邦準備制度は、その後の月間統計で予想を上回るインフレ率の数字を目にした。最新の雇用統計では非農業部門雇用者数の伸びが加速し、今後の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利下げの一時停止検討もあり得るのではないかという臆測を誘った。
企業関係者から得た見通しの情報も引用しつつ、そうした観測に政策担当者はおおむね取り合ってこなかった。9月のCPI発表の数日後、10月14日に講演した米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は「残念な数字」と評価しつつも、価格決定力低下に関する企業からの報告は「今後の上昇が緩やか」と予想する根拠の一つと説明した。