右折待ちのクルマは疑うべし!? 増加するバイクの右直事故をどう防ぐ?
ケース1:直進バイクが見えているのに右折して衝突
これらデータから、バイク直進中に右折するクルマとの事故で死亡するライダーが、極めて多いことが分かります。では、実際に、交差点などで直進中のバイクと、右折しようとするクルマとの事故には、どういったケースが考えられるのでしょうか? まず、右折待ちなどをするクルマのドライバーには、直進するバイクが見えているのに、曲がってしまい事故になるケース。これは、多くの場合、4輪車と比べ、バイクの車体が小さいことで起こりやすいといわれています。 こういったケースでは、ドライバーから見て、直進中のバイクは実際の位置より遠くにいるように感じることで、「間に合うと思って右折した」ところ、実際はもっと近づいていて衝突してしまうことが多いようです。 特に、コンパクトな車体の原付バイクなどや、前から見て細いオフロード車などでは、ドライバー側がバイクとの距離感を「見間違う(錯覚する)」ケースが起こりやすいということをよく耳にします。 ちなみに、1998年にバイクのヘッドライトが常時点灯式に義務化された背景にも、こうしたドライバー側の錯覚などによる右直事故が多かったことも要因となっています。 また、直進するバイクの速度がかなり高い場合も、こうしたケースは起こりやすいといわれます。 これも、警察庁のデータによれば、2023年の右折対直進死亡事故では、自動二輪車が直進だった場合の方が、乗用車・貨物車が直進の場合よりも速度が高い傾向だったといいます。 具体的なデータでは、直進車側の危険認知速度の平均(速度帯中間値の平均)を比較した場合、 ・直進する自動二輪車で72.3km/ ・直進する乗用車・貨物車で63.4km/h だったとか。あくまで平均値ですが、自動二輪車の方が約9km/h近くも速かったという結果も出ています。 ちなみに、ここでいう危険認知速度とは、交通事故の当事者(クルマのドライバーやバイクのライダーなど)が、相手の車両や人などを認め、危険を認知した時点の走行速度のことです。 具体的には、ブレーキ、ハンドル操作などの事故回避行動をとる直前の速度をいい、運転者が危険を認知せず事故に至った場合は、事故直前の速度を意味します。事故車両のブレーキ痕や損壊の程度、事故当事者の証言などから、事故の直前のスピードを推測して割り出すのだといわれています。 ともあれ、そもそも交差点などがある一般道で、自動二輪車の法定速度は速度規制がない幹線道路などでも60km/hまで。直進中のバイクが右折車との事故で死亡したケースで、平均速度が72.3km/hだったということは、速度違反をしていたバイクが多かったことがうかがえます。 そして、こうしたデータからも分かる通り、スピードを出し過ぎて走行しているバイクは、前述のクルマのドライバーから小さく見えることとの相乗効果もあり、右直事故に遭いやすいといえるでしょう。