【大学野球】1年ながら立大に欠かせない存在の小林隼翔 あこがれは高校先輩の明大・宗山塁
新入生とは思えない意識レベル
【9月22日】東京六大学リーグ戦 立大7-4法大(立大1勝1分) 立大の1年生・小林隼翔(広陵高)には、相当な覚悟があった。合流した2月の段階から意識レベルが新入生とは思えない風格だった。 【選手データ】小林隼翔 プロフィール・寸評 「目配り、気配り、心配り。寮生活の中で行き届いていない部分を気にして、行動するようにしています」 新入部員でも遠慮しない。私生活、学校生活が野球につながると、率先して動いた。立大野球部の空気を変える存在になると確信した。 キャリアは申し分ない。昨年9月、侍ジャパンU-18代表はU-18W杯(台湾)で悲願の初優勝を飾った。急造チームを一つに束ねたのは遊撃手の主将・小林だった。 アクシデントがあった。アメリカとの一次ラウンドで、守備中に味方と交錯。脳振とうと診断され、4日間の検査入院。退院後の経過は良好で、日本チームはNPBの脳振とうに関する規定にならい、決勝での復帰を想定していた。ところが、大会主催者から出場許可を得られず、台湾との決勝も欠場となった。試合に出場できなくても、チームのために献身的に動いた。メンバーの誰もが主将・小林の姿勢が、世界一の原動力と口をそろえた。 すべては広陵高での3年間の教え。中井哲之監督から学んだことを、体現したのである。 立大でも1年春から遊撃手として、リーグ戦での出場機会に恵まれた。15試合中13試合に出場し、規定打席不足ながら打率.250(28打数7安打)と貴重な経験を積んだ。
今秋も好スタート
今秋は慶大2回戦でのリーグ戦初本塁打が連盟通算4000号。一番に入った法大2回戦では第2打席でプロ注目左腕・吉鶴翔瑛(4年・木更津総合高)から左越えソロを放った。この日は2安打で、5試合で18打数7安打、打率.389とすでに打線に欠かせない存在となっている。遊撃守備も球際に強く、フットワークの良さと、正確な送球で、1年生が立大のセンターラインを固めている。 今春から母校を指揮する立大・木村泰雄監督は「春に入学して以来、技術、精神、体力的にも成長している。練習をし過ぎてしまう(苦笑)」と目を細め、オーバーワークを止めることもある。練習の虫。広陵高出身の巧打の遊撃手。身近に共通する選手がいる。広陵高の先輩に当たる明大・宗山塁(4年)だ。 「雲の上の存在。追いつけるように、越えていけるようにしたい」。小林は目を輝かせる。 開幕5戦で、春に記録した7安打に到達した。 「数字は気にしないようにしている。結果を求めすぎない。ただ、状態はもっとよくなると思っています。失策ゼロで投手を助ける守備で、良いところで一本を出す。全打席でヒットを打つ。持ち味は打撃ですが、ポジションはショートなので、攻守にわたってチームの勝利に貢献したい」 この秋で、あこがれの宗山は卒業する。来年、東京六大学は創設100年。小林が次世代をけん引する後継者として、神宮を盛り上げる。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール