イプシロンロケット2号機打ち上げ準備状況説明会(全文1)開発のコンセプト
期待の性能とコスト以外に必要となる付加価値について
それからもう1つ、同じことなんですけれども、ちょっと別の観点で見てみると、イプシロンのコンセプトってこういうふうに言えると思うんですね。要は今、世界各国の状況を考えると、宇宙ロケットというものが、だんだんビジネスの方向にシフトしようとしている。アメリカなんかはそういう世界になってるわけですね。で、こういう世界の中で何が一番大事かっていうと機体の性能とコスト、これが一番大事であることには間違いない。だけど、性能とコストだけで、値段だけで物が売れるか。そんなことはない。お金には換算できないような、あるいは換算できてもいいんですけれども、いろいろな付加価値を含めた総合力、これをわれわれはユニバーサルデザインと呼んでいますけれども、そういったものは大事なんですね。機体の性能とかコストだけではない。いろいろな付加価値が必要だ。 じゃあ、その付加価値ってなんですかっていうことをお話ししようとすると、たくさんあるんですけれども、今日は時間の関係で2つに絞ってお話しするとすると、1つはユーザーの皆さんですね。人工衛星とか惑星探査機をつくる皆さんの立場で考えると何かっていうと、利便性。ユーザーにとっての利便性。ちょっと硬い言葉になってしまって申し訳ないんですけれども、もうちょっと分かりやすく言うと、これは物理的には乗り心地とか、それから軌道投入精度ですね。なるべく快適な環境でロケットに乗っていける。で、最終目的地に精度良く達することができる。 こういったことが大事なんですけれども、それだけではなくて情緒的に言うとホスピタリティーですね。衛星さんの要望にとことん応えていく。実は2号機で打ち上げるERGっていう衛星、いろいろ要求が厳しくて、ああしてくれ、こうしてくれっていうのはたくさんあるんですけれども、9月に内之浦で、もうロケットの打ち上げ準備っていうのが始まってる段階でも、まだいろいろ、こうしてほしい、ああしてほしいっていうのがあったりするんですね。そういうのにイプシロンっていうのは平気で応えていく。これ、なかなか世界のロケット、全部ができることではないと思うんですね。そういうホスピタリティーでイプシロンは勝負していこうという部分もすごくある。 それから最後のところ、機動性って書いてありますけれども、これ、宇宙ロケットの未来を開くような革新技術を含んでいるかどうか。要はせっかくロケットをつくったとしても既成の技術の寄せ集めでつくったんでは未来は開けない。その瞬間はいいですよ。その瞬間はいいけれども、未来はなかなか開けない。われわれは少ない予算の中でも、なるべく未来につながるような技術に挑戦していかなきゃいけないんですね。そういったものが、どんだけ入ってるかっていうことが、そのロケットの魅力につながるわけですね。 以上、こういったような宇宙ロケットのユニバーサルデザインと、われわれは呼んでいますけれども、機体の性能とかコストだけではなくて、そういう付加価値を含めて、どんどんイプシロンの魅力を上げていこうというわけなんですね。で、あとで証拠の品をちょっとお見せしますけれども、例えば軌道投入精度っていうのは先ほどご紹介したPBSを使うと世界最高レベル。それからイプシロンの試験機では、特別に振動を抑制する装置とか、あるいは地上の設備を工夫してロケットが飛んでいくときの振動の環境とか、あるいは発射するときの音の衝撃、ああいったものをものすごくマイルドにしていて、その2つの観点では世界最高レベルに乗り心地がいいんですね。 それから、機動性という意味では皆さんご存じのとおり、イプシロンでは管制室の中をがらっと、M-Vの時代から変えてしまって、より少人数、短期間、小さな設備でロケットの打ち上げ管制ができるようになっている。こういったことがロケットの未来、あるいは宇宙開発利用の未来を開くというふうに考えてるんですね。すいません、大事なところなんで、ちょっと気合が入り過ぎましたけれど、このあと、さくさくいきたいと思います。 で、実際、イプシロン試験機の開発っていうのが、どういうようなコンフィギュレーションで行われたかっていうのは、ここに書いてあるんですけれども、先ほどお話ししたように、新しいことにいろいろ挑戦していて、そういったことがイプシロンだけではなくて、いろいろこれからの宇宙開発利用の未来につながるというふうに思ってるわけですけれども、その他の部分では試験機の段階では既存の優れた技術があるんであれば、それを有効に活用しようということになっていて、例えばイプシロンの1段目はH-IIAロケットのサイドブースター、SRB-Aを使いました。それからイプシロン2段目、3段目っていうのはM-Vロケットの3段目、4段目を使いましたということになっているんですけれども、こうすることによって試験機開発っていうものの開発費を抑えて、それから開発期間も短くして、先ほどご紹介したような新たな取り組みっていうのを、いち早く世界にデビューさせることができたということなんですね。