公募議員に相次ぐ不祥事、新人教育は? 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
●選挙に勝てなければ仕方がない
府省や部会で専門性を磨いて、ついでに権限も担っていけば選挙に有利です。とはいえ新人議員の場合は「次も勝つ」が至上命題。期間中に自身の選挙区をほとんど訪れず、自党の他候補を応援できるようになって初めて一人前とみなされます。したがって派閥の新人教育も究極のところ「次も勝つ」一辺倒となりがちで、当選回数の少ないまま部会で官僚をどなりつけたり府省内で威張り散らしていると、いつの間にか何をしても許されると勘違いしかねません。 武藤氏や宮崎氏は自民党が圧勝した12年と14年で当選した2回生。危ないお年頃でもあったのです。2人とも選挙区事情は野党がバラバラに立候補したお陰という面もあったのに油断したと指弾されても仕方ありません。 本来は東京にいる時には、「陳情」といって法律を作って願いをかなえてほしいとの声や、行政(役所)へ何か働きかけてほしいという相談や要望を受けるという仕事があります。内容の制限はありません。国会開催中であれば議員会館を訪れて面会証(衆議院)か面会申込書(参議院)に必要事項を書き「用件」の欄にある「陳情」にマルをします。議員本人がいなくても秘書や事務所員がだいたい対応します。ただしカネなどを見返りに渡したのがバレたら処罰されます。 地元でも事務所で対応します。東京以外で選出された議員は金曜日の国会が終わってすぐ地元へ戻り、こうした陳情を聞いたり、後援会や支援者と会合したり、式典に出たりととにかく人と触れ合って来たるべき選挙に備えます。選挙区のある自治体の首長(市町村長など)や自党の地方議会議員とのコミュニケーションも欠かせません。お祭りがあれば御輿も担ぎます。衆議院の本会議は火・木・金が定例日なので火曜朝までには東京へと戻ります。俗に「金帰火来」とよばれる現象です。 最大の目的は次の選挙に勝つための日常準備です。当選すると当然、国会がある日は地元へ戻れません。一方で落選したライバルや新人は毎日のように選挙区を回って来たるべき日に備えています。選挙区を「票田」と田んぼにみなす政治用語があります。落選候補は日々、当選議員のそれを食い破ろうとやっきになっています。そこで週末地元に戻って「田の草取り」つまり浸食してきたライバル・新人の勢力を雑草をむしるようにして整えていくのです。不倫などしている時間はないはずです。
--------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】