公募議員に相次ぐ不祥事、新人教育は? 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
●「脱派閥」と新人教育
自民党では、かつて派閥が「新人教育」の役割を果たしてきました。選挙そのもののアドバイスはもとより、資金集めや支持基盤をつけるといったさまざまな役割を果たしてきたのです。 その関係性が薄れていったのも、やはり小選挙区制の導入が響いています。同時に始まった政党交付金の党への支給をはじめ、総裁(党トップ)や幹事長(ナンバー2)に権限が移行し、派閥の領袖(親分)の力は相対的に弱まりました。 とはいえ「脱派閥」をうたった新人教育がうまくいっているともいえません。01年「自民党をぶっ壊す」と宣言して誕生した小泉純一郎政権は05年のいわゆる「郵政選挙」で圧勝。初当選議員83人を対象に新人議員研修会を行いました。しかし現時点で無派閥のままでいる議員はごくわずかです。 2012年の総選挙で圧勝し、政権を取り戻した自民党の115人の新人議員研修会も「派閥から党へ」をうたっていた石破茂幹事長の発案でした。しかし多くは派閥に勧誘され、今では石破氏自身が派閥を率いているありさまです。 なぜ派閥が衰えつつも教育機関としては力を持つのでしょうか。小泉首相以来、派閥の推薦名簿順に国務大臣を選んでいくという慣行はほぼ消えたものの、副大臣や政務官および党の部会長といったポストは依然として派閥推薦というのが大きいでしょう。 “日本最強のシンクタンク”と言っていい中央府省は、エリート公務員の官僚が引っ張っています。そのトップというべき事務次官のさらに上のポストが副大臣と政務官。三権のうち「行政」の仕事を中にいて、しかも上位で体験できるのは有意義です。 政策や法案を立案するために党内に設置される「部会」も強力な教育機関です。憲法では国会を唯一の立法機関と定めています。国会に法案として出される多くが中央府省に勤める官僚らによって作成されます。府省内でGOとなれば自民党中心の政権では「与党審査」にかけられるのが通例です。 日本は議院内閣制のため「政府・与党」が一体です。事前に与党の了解を取っておかないと国会で思わぬ混乱を生みかねないので安全弁として機能しているのです。 総裁は首相職で忙しいので、代わりに三役(幹事長、総務会長、政務調査会長)と呼ばれる幹部が仕切っています。法案は政務調査会にある部会や調査会にかけられます。部会はおおむね府省に対応する形となっています。開かれるのは国会審議が始まる9時より前。担当する官僚が「ご説明」を行い、質問や議論をした結果、修正される場合もあります。最後は全会一致でOKが出て、会長と副会長の了承を得たら総務会へと移行します。ここを通過したら審査は終了で、自民党国会議員は必ずこの法案に賛成しなければいけないという「党議拘束」を受けるのです。 国会より前に法案への是非が話し合えるのは与党ならでは。掛け持ちして政策を練る新人議員も多数います。