「女性は甘いものが好き」「仕事後のビールはよりおいしい」は本当か…味覚が人によって違いすぎる、納得の理由
最近、グルメを紹介するテレビ番組や食品のパッケージなどで、「濃厚!」が褒め言葉として連発されている。チョコや抹茶味などスイーツでも、濃厚味がもてはやされているし、SNS発の料理家が出すレシピ本でも、めんつゆやケチャップ、マヨネーズなどを使った濃いめの味つけが定着している。ラーメン専門店に至っては、少なくとも4半世紀前から、濃厚さを売りにする店が人気だ。 【写真】「駅弁、食べたらダメ?」新幹線の車内飲食がいまだに賛否両論のワケ 濃厚味だけでなく、味の好みについては、さまざまな言説がある。「女性は男性より甘いモノを好む」「苦味が苦手なのは、『舌がお子さま』だからではない」……。今回は、科学者の論文や書籍をもとに、味覚の謎に迫ってみたい。
味の好みの違い、どこから生まれる?
前提として、味の濃い、薄いの感じ方や好みは、個人差があることは、広く共有されている。少し前の例だが、2007年7月に『きょうの料理』(NHK)が、「満喫! 旬の味 あっさりVSこってり 夏野菜」という特集を組んでいた。 紹介されたレシピは、こんな感じだ。トマトを使ったあっさり料理なら「トマトと枝豆の卵とじ丼」、こってり料理なら「トマトの鶏みそ田楽」。かぼちゃのあっさり料理は「かぼちゃのごま豆腐」、こってり料理は「かぼちゃのチンジャオロースー風」。どちらもおいしそうだが、好みの違いは、どこから生まれるのだろうか。 『味のなんでも小事典 甘いものはなぜ別腹?』(日本味と匂学会編、講談社)が、性別による味覚の違いを解説している。これまで、1888年に科学雑誌『ネイチャー』で発表された調査を皮切りに、各国の研究者たちが男女の味覚の違いを調査してきた。その結果、どうやら女性は男性より味覚が鋭敏な傾向があるらしいことが分かった。また、女性は月経時や妊娠中などで分泌するホルモンのバランスが変わり味覚に影響することがあるものの、新生児で比べた場合でも、女児のほうが甘味を好む傾向が出ている。 ラットもメスが甘いものを好む傾向があるが、生まれたばかりのメスに男性ホルモンを注射すると、甘味に対する好みを示さなくなる。しかし、人間の場合は社会的な環境も味覚に影響するからか、おそらくもっと複雑だ。実際、甘いものに関心がない、あるいは苦手という女性は少なからず存在する。男性については、甘いものを好まないほうが男性らしい、といった社会的な偏見があった。 しかし、2008年から2009年頃に「スイーツ男子」という言葉が流行してからは、甘いもの好きを公言する男性も増えた。実際のところ、甘さに対する好みに「性ホルモンがどのように関わっているのかはまだわかっていません」(『味のなんでも小事典』より)とあるので、女性がより甘いものを好む傾向がある、としか言えないようだ。