「女性は甘いものが好き」「仕事後のビールはよりおいしい」は本当か…味覚が人によって違いすぎる、納得の理由
謎が多い「味覚」をめぐる議論
19世紀の『ネイチャー』の調査では、「塩味を除いて、女性のほうが男性よりも薄い濃度でそれぞれの味が感じられることがわかりました」とある。そこからからざっと140年。科学が進歩し社会も変わった今はどうだろうか。 『アットダイム』2018年5月28日配信記事「男性と女性で好みの味覚が異なるワケ」で、山形徳州会病院長の笹川五十次がすべての味覚で女性は男性より鋭い、と述べている。現在では、塩味も女性のほうが鋭く感じる、という研究結果が出ているそうだ。笹川医師は、女性が子育てを主に担当してきたことから、食品の品質を確かめる能力が高くなったのではないか、と推測した。しかし、やはり可能性にとどまる。 うま味や苦味については、どうだろうか。『味のなんでも小事典』に、興味深い指摘があった。精神的なストレスがかかると、苦味に対する感受性が鈍くなる。ひと汗かいた後、あるいは仕事の後はビールがうまい、と感じる人は多いと思われるが、それはストレスで唾液中に味をマイルドにするリン脂質が増加し、苦味に対する感受性が低下したからだそうだ。 また、苦味とうま味は、他の味より長く舌に残る。うま味の強い食品を口にした後、その余韻を楽しめるのも、苦いものを食べた不快感がしつこく残るのも、そうした味の性質による。しかしなぜ後味が残るのかは、わからないそうだ。 大阪大学の研究専用ポータルサイト『ResQU』内の2023年6月19日配信記事「個人の味覚感度の数値化に成功」(同大学連合小児発達学研究科の青木京子助教)は、苦味についてのレポートだ。遺伝子の解析と詳細な味覚検査を行った結果、苦味の感度は遺伝子のタイプによって異なっていることが判明した。これまで、味覚検査は主観的な方法しかなかったが、客観的・統計的な方法で結果を出せたそうだ。「(味覚)感度が高いタイプの遺伝子をもつ人と低いタイプの遺伝子をもつ人では苦味感度に何十倍もの違いがありました」と記事にある。 最初に書いた通り、最近は「苦いモノが苦手なのは、舌がお子さまだからではない」と言われるようになった。その根拠はこの研究かもしれない。