マラソンの新常識…履くだけで「10分タイム」が縮む、厚底シューズの《スゴイ効果》と意外な弊害
酷暑が去ってマラソンシーズン到来。公園などでは、健康やダイエットのため、あるいはレースに向けて走る多くのランナーの姿が見られる。そのほとんどが履いているのは、いわゆる“厚底シューズ”だ。 【図解】たった3秒で…筋力が上がる 「驚異の方法」はこちら! 「いまではランニングシューズ=厚底シューズといっても過言ではないほど。薄いソールのランニングシューズを探すことはかなり難しくなっています」と話す、プロ・ランニングコーチであり、陸上競技解説者としてもおなじみの金哲彦さん。 近年、トップアスリートに限らず、多くの市民ランナーも履くようになった厚底シューズ。だが、数々の市民ランナーの走りを観察してきた金さんによると、厚底シューズを上手に履きこなせているランナーはさほど多くはないという。 「加齢や運動不足などで脚筋力も柔軟性も低下している中高年ランナーはとくに、厚底シューズ特有の高い反発力を上手に制御できなくて、故障につながる可能性が高くなっています」(金さん) 市民ランナーが怪我なく走り、せっかくの厚底シューズの恩恵を最大限に受けるにはどうすればよいのか? 『厚底シューズ時代の 新・体幹ランニング』からの抜粋・再編集によりお届けする。
トップ選手だけでなく市民ランナーまで高速化した
私が直近でサブ3(=フルマラソン3時間切り)を達成したのは、51歳のとき。9年前の2015年のことでした。2015年のときのタイムは2時間57分。国内年齢別マラソンタイムランキングでは70位前後だったと記憶しています。 ところが、2024年だと51歳では2時間52分のタイムでもランキングは99位。2時間57分では、100傑のはるか圏外へと押し出されてしまいます。この傾向は他の年代でも等しく見受けられます。 この差はどこにあるのでしょうか。 負け惜しみを言うようですが、日本の市民ランナーたちのフィジカルが何の理由もなくレベルアップしたわけではないと思います。この高速化の原動力になっているのは、道具の進化。 そう、厚底シューズの登場です。 厚底シューズが世の中にデビューしたのは2017年のこと。その恩恵をはじめに受けたのは、国内外のトップ選手たちでした。 男子マラソンの世界新記録は次々と更新されました。2019年には、厚底シューズを履いたエリウド・キプチョゲ選手(ケニア)は、非公式ながら人類の夢だった「フルマラソン2時間の壁」を破ることに成功しています。 女子マラソンでも、長年破られなかったポーラ・ラドクリフ選手(イギリス)の記録が、2019年に16年ぶりに更新されて以降、じわじわと世界記録が更新され続け、2024年のシカゴマラソンではついにチェプンゲティッチ選手(ケニア)により、サブ10(2時間10分切り)が達成されました。 日本の大学や実業団の駅伝選手たちも厚底シューズを履くのが当たり前になり、近年の駅伝レースの高速化に拍車がかかるように。 着用する選手たちが好記録を連発するにつれて、市民ランナーもこぞって厚底シューズを履くようになり、それが市民マラソンの世界にも高速化の波を巻き起こしているのです。