70歳まで働いても「暮らしていけない」…夫婦合わせて〈年金月12万円〉の60代夫婦に迫る「老後破綻」のリミット【FPが「年金増額策」を助言】
国民年金の「任意加入」で受給額を増やす
頑張って働き、貯蓄に励んでも、5年分の蓄えではとうていまかない切れません。老後生活の要となる年金の受給額を、少しでも上げたいところです。ここは国民年金をフル活用して、賢く増やしていきましょう。 まずは、国民年金の任意加入です。国民年金は20歳から60歳までの40年間、ひと月の欠けもなく保険料を支払うと、基礎年金が満額になります。 小林さんが年金に加入していた期間は35年。満額を受け取るには5年足りません。 でも、大丈夫。40年に満たない場合は、60歳から65歳の間に任意加入して満額にすることができます。じつは、小林さんはレアケースではありません。学生のころは払っていなかったり、転職した際に空白ができていたりと、40年より少ない人はけっこういるものです。現時点での加入月数は、ねんきん定期便に記載されています。一度、確認しておくといいでしょう。 小林家では妻の琴美さんも同じように5年の未納期間がありました。ですので、夫婦ともに65歳まで任意加入をすることにします。国民年金の保険料は月額1万6,520円です(2023年4月)。 〈任意加入のプランニング〉 国民年金保険料 夫婦合計 年額約40万円 65歳での基礎年金の受給額 月額6万6,800円(年額約82万円) 夫婦を合計すると、月額13万6,000円(年額約163万円) 基礎年金が満額になったとはいえ、これだけで生活していくのはかなり厳しいと思います。 次は国民年金基金に加入して、さらに年金の上乗せを図ります。国民年金基金は会社員にとっての厚生年金のようなもの。つまり、自力で2階建てにするのです。
「国民年金基金」にも加入する
国民年金に任意加入した小林さん夫婦は、国民年金基金も利用することに決めました。2人合わせて毎月約13万円の支出が増え、これが65歳まで続きます。子どもにかかっていた教育費が、老後資金に変わったという感じです。 では、それぞれについて見ていきましょう。 〈小林さんが選んだプラン〉 1口目・保証期間のないB型、2口目以降・B型を5口 合計6万6,745円(年額約80万円) 65歳までの掛金総額 400万4,700円 65歳からの受取額 年額21万円 約20年で元が取れる計算です。 〈琴美さんが選んだプラン〉 1口目・保証期間のないB型、2口目以降・B型を3口とI型を1口 合計6万5,005円(年額約78万円) 65歳までの掛金総額 390万300円 65歳からの受取額 終身が年額15万円、15年の保証期間付が年額3万円 65歳~80歳まで年額18万円、80歳以降は年額15万円 約19年で元が取れます。 「なんだか中途半端な数字だなあ。限度額まで目一杯までかければいいのに」と、不思議に思うかもしれません。ですが、国民年金基金は口数で選ぶことが決まっているのです。限度額に近い口数で考えた結果、こういうプランになりました。 60歳から65歳までは国民年金基金に加入したぶん、支出は年に158万円増えています。しかし、掛金は全額が控除の対象になります。所得税が5%だとすると、住民税と合わせて15%の控除が受けられます。2人ぶんなら、23万7,000円くらいが戻ってきます。ですから、実質の掛金は134万3,000円です。 年金を増やしながら節税にも役立つ。国民年金基金は一石二鳥の方法なのです。 これによって70歳以降の収支バランスはよくなりますが、やはり83歳で資金がなくなってしまいます。 小林さんのように自営業者は、国民年金しかありません。しかし、国民年金には年金を増やすしくみが用意されているのです。おまけにお得も盛りだくさん。小林さんが選んだのは国民年金の任意加入と国民年金基金でしたが、ほかにも制度がありますので紹介していきましょう。
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