「白人至上主義」はなぜアメリカで容認されないのか?
辞任したバノン氏の意図
白人至上主義デモをめぐるトランプ氏の一連の発言の余波が続く中、8月18日、大統領首席戦略官・上級顧問を務めてきたスティーブ・バノン氏が辞任した。辞任直前、首席戦略官のバノン氏はデモに参加した白人至上主義者たちを「道化師」とさげすんでいる。「オルトライト」系といわれる保守系ネットメディア「ブライトバート」の会長であったバノン氏のこの発言の意図も分かりにくい。 想像するに、バノン氏がホワイトハウスで何よりもやりたかったのは、中国やメキシコとの貿易不均衡などから白人ブルーから層を守る「アメリカ第一主義」「経済ナショナリズム」だったのかと想像される。「白人至上主義者のメインストリーム化」ではなかったのかもしれない。トランプ氏も、トランプ氏の仕掛人も意図しない形で白人至上主義が膨れ上がってしまっているのかもしれない。そう考えると、今回のデモは何とも皮肉である。 ------------------------------------- ■前嶋和弘(まえしま・かずひろ) 上智大学総合グローバル学部教授。専門はアメリカ現代政治。上智大学外国語学部英語学科卒業後,ジョージタウン大学大学院政治修士課程修了(MA),メリーランド大学大学院政治学博士課程修了(Ph.D.)。主要著作は『アメリカ政治とメディア:政治のインフラから政治の主役になるマスメディア』(単著,北樹出版,2011年)、『オバマ後のアメリカ政治:2012年大統領選挙と分断された政治の行方』(共編著,東信堂,2014年)、『ネット選挙が変える政治と社会:日米韓における新たな「公共圏」の姿』(共編著,慶応義塾大学出版会,2013年)