「白人至上主義」はなぜアメリカで容認されないのか?
「双方に責任ある」がダメな理由
トランプ大統領の「双方に責任がある」発言は一見、「喧嘩両成敗」のようにも聞こえる。しかし、「差別的な白人至上主義はアメリカの暗黒部」「KKKは容認してはいけない」というこれまでのアメリカの一般的な言説からすると、両論併記は白人至上主義者擁護に他ならない。 人種はアメリカにとって建国以来の最大の社会問題である。なかなか解決できない問題だ。だが、公民権運動に代表される反差別や平等主義、多元主義の流れは、過去40年以上の社会の大きく太いベクトルであった。もちろん、法的な平等がある程度達成されても、「皮膚の色」という問題は大きく、「心の平等」は程遠い。それが近年のアフリカ系に対する警察の過剰な対応についての反発なども生んできた。
それでも平等に向けて、少しずつ困難を解決に近づけようと動いてきたのが、アメリカの現代史でもある。その精神はツイートの「いいね」の数で記録を作ったことで話題となっているオバマ前大統領のツイートが見事に象徴している。オバマ氏の13日の投稿は、南アフリカのマンデラ元大統領の言葉を引用して「誰も生まれながらに、肌の色や生い立ち、宗教によって他人を憎まない」「人は憎むことを学ばなければならない。憎しみを学べるのなら、愛を教えられる」とある。自分自身が黒人や白人の子供たちにほほ笑みかける写真が効果的だ。 オバマ氏の今年1月の退任演説では「2歩前進するたびに、1歩後退しているようにいつも感じる。しかし、アメリカの長い道のりは、前進することで決められてきた。一部の人ではなく、全ての人を受け入れる建国の理念を常に広げていった」と述べた。 今回の白人至上主義をめぐる一連の騒動は、今後も余波を広げていく。今回のトランプ氏の発言は、オバマ氏の目には間違いなく「1歩後退」にみえているであろう。 ただシャーロッツビルの事件後に行ったワシントンポストとABCの最新の調査によると、「白人至上主義の主張は認められない」としたのは83%と圧倒的だったが、「容認できる」と回答した人が9%いた。この数字の解釈は難しいが、筆者の想像以上に多い。それだけ、アメリカ社会が変化しているのかもしれない。