「よし、ラーメン店を開いて一発逆転だ!」→失敗。お金に困っているときに手を出したビジネスほどうまくいかないワケ【心理学者が解説】
お金に余裕がないと、頭も働かない!?
お金に困っていると、そのことばかりが気になります。 「生活は、大丈夫だろうか?」 「家族を養っていけるのだろうか?」 「貯金もできずに、老後はどうすればいいのだろうか?」 そういう心配のほうに気をとられるので、そのほかのことについては頭が回らなくなります。 英国ウォーリック大学のアナンディ・マニは、464名のサトウキビ農家にお願いして、収穫前と、収穫後に2回、知能テストを受けてもらいました。また、脳トレのような作業もしてもらいました。 収穫前の農家は、お金を使い果たしていて、余裕がない状態です。収穫後には、お金が入ってきて裕福な状態です。 調べてみると、収穫前の農家は、知能テストでも、認知的な働きを測定する脳トレの作業でも、非常に成績が悪くなりました。資金繰りのことで頭を悩ませている状態では、そちらにメンタル力を奪われるので、その他のことなどできないのです。 収穫後になって、懐が暖かくなりますと、余計な心配もなくなるので、頭の働きもよくなるのです。 私たちは、会社をクビになったり、お金に困ってくると、「何か儲かる仕事を考えなければ」と思うものですが、そういう状態では、残念ながら頭はうまく回りません。いきなり、おかしなビジネスを始めてしまって、踏んだり蹴ったりの思いをするのです。 だれも思いつかないような新しいビジネスを考えたりするのは、ある程度、お金に余裕があるときのほうがいいですよ。 お金に余裕があるときのほうが、頭の回転はよくなるのですから。 お金に困っているときには、どうしても近視眼的になってしまい、さまざまな観点から物事を考えたりできなくないます。そういうときには、なにもしないでじっとしているのが正解です。思いつきでなんの準備もなく仕事を始めても、どうせ失敗するに決まっています。 お金があるときに、お金がないときのことを思い出してもらうと、「あのときには、どうして、あんなにバカげたことをしようとしたのだろうか」と思う人も多いのではないでしょうか。 なんのノウハウもないのに、いきなりラーメン屋さんになろうとしたり、慣れない株に手を出そうとしたりするのも、お金がないときです。 私たちは、お金に余裕のないときは理性的に物事を考えられず、「そんなことは絶対にうまくいかない」ということに思いが及ばないのでしょう。 お金がないときには、新しいことを考えないほうがいいと思います。 しっかりと守りに入って、おかしなことをしないようにしましょう。 内藤 誼人 心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表 慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる! 暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。
内藤 誼人