忘れたくても忘れられない…私たちが抱えるコロナ禍のトラウマとは
今年1月、セサミストリートのエルモはインスタグラムに「エルモだけど、みんな元気?」という何気ない投稿をした。ところが、彼は無意識のうちにかさぶたの端を剥がし、その下で必死に自分を縫い合わせようとしている新しい皮膚を露出させてしまったようで、フォロワーからは「どこへ行っても孤独を感じる」という悲しいコメントや「寝ても覚めても毎日が悪夢」という実に気がかりなコメントが大量に寄せられた。 【写真】「整理整頓」がストレスと不安を撃退させる。6つのカテゴリ別、片付け方法 とくに“コロナ”という言葉は、さまざまな感情と共に繰り返し登場した。「元気じゃないよ、エルモ。コロナ禍からずっと暗闇の中にいる」 コロナという言葉を聞くだけで身体的な反応が起こり、目を閉じて顔をしかめる人や身震いをする人は少なくない。今年2月に動画ストリーミングサービスITVで配信された英国の3部作ドラマ『Breathtaking』は、緊急治療室のスタッフが直面したパンデミックの現実をめまいがするほど詳細に描き、当時の記憶を鮮明に思い起こさせた。SNSには当時の政治的判断に対する怒りを煽るようなレビューが多い一方で、あの暗黒の日々を思い出したくない人々からは「早すぎる」との声もある。 英国初のロックダウンが発表された2020年3月末から丸4年が経ってやっと、私たちはコロナ禍が残した波紋の大きさに気付き始めた。“アフターコロナ”と呼ばれる時代になったいまでも、私たちの心は、取り除こうにも取り除けない悲しみに包まれたままなのだろうか。 もしかして私たちはみな、多かれ少なかれパンデミックのトラウマを抱えているのだろうか。イギリス版ウィメンズヘルスからみていこう。
サバイバルモード
「パンデミック前の私は、全体的にハッピーでした」と話すのは、英チェシャー州に住むパーソナルトレーナーのアレクサンドラ(33歳)。「子宮内膜症の症状も、一貫した食事と運動で上手く管理していました。2016年からはうつ病とも闘っていますが、パンデミック前は(精神科の)薬をやめて社交的な生活を送り、仕事を楽しんでいました」 「あの春はエネルギーが無限にありました」。2020年3月に第1次ロックダウンが始まると、急な変化に直面して困っている人を助けようと思い、インスタグラムで無料のトレーニングの配信を開始した。「いま思えば、あれが私なりのサバイバルモードだったのでしょう」 でも、第2次ロックダウンでは同じように行かなかった。それまでは年に1~2回だった慢性疾患の頻度が月に2~3回になり、慢性疲労、刺すような体の痛み、関節痛が現われて、メンタルヘルスの状態が急激に悪化した。現在は身体的な症状と心理的な症状の両方で休職している。 子宮内膜症の手術は15ヶ月待ち。「私にはもう戦意が残っていません。コロナ前は29歳でしたが、いまはもう33歳。なにもしないまま節目の年が過ぎてしまいました」。収入がないのでアパートも引き払い、実家に戻った。 アレクサンドラによると、メンタルヘルスの状態と子宮内膜症の症状が悪化したのは、パンデミックの余波のせい。この余波には、当時のストレスの名残りや、産婦人科系の治療が依然としてコロナ禍の影響を大きく受けている(かなり待たないと受けられない)という現実も含まれている。最初だけ調子がよくてあとはボロボロという彼女のパターンは、友人たちのパターンとは真逆だった。 「みんな最初は苦しんでいましたが、ロックダウンが終わってからは人生を前向きに生きています。でも、私は相変わらず抜け出せません」