忘れたくても忘れられない…私たちが抱えるコロナ禍のトラウマとは
無意識のうちに現れるトラウマの症状
エルモに寄せられた人々の悲痛な叫び。そのすべてがパンデミックのせいとはもちろん言えない。人々は財政難で、政治は混乱を極め、世界のニュースは死と破壊に関するものばかり。 米国の非営利団体Sapien Labsが世界中から集めた約50万人の自己申告データを分析した結果、英国は世界で2番目に惨めな(メンタルヘルスの状態が悪い)国であることが分かった(逆にメンタルヘルスの状態がいい国のトップ3はドミニカ共和国、スリランカ、タンザニアで、最も悪かったのはウズベキスタン)。この報告書によると、これにはコミュニティや人間関係が崩壊していること、幼い頃からスマートフォンを使っていること、超加工食品を大量に消費していることなどが関係している。 このような問題は制限措置やロックダウンの以前からあったけれど、その影響がパンデミックによって増幅したのは間違いない。少なくとも、ニューヨーク在住のライター、P. E. モスコヴィッツ氏はそう考えている。モスコヴィッツ氏は、メンタルヘルス問題のほとんどが現代の経済・文化システムに根差していることを暴くニュースレター『Mental Hellth』を配信し、昨年このトピックに関するニュースレターを書いていた。 「DSM(精神科医が使用する精神疾患の診断・統計マニュアル)のPTSDのチェックリストには、不安、心を閉ざしている、怒りっぽいとありますが、これはまさに私たちの状態です。どれもトラウマの症状ですが、これがすべてパンデミックのせいというわけではありません。人々はパンデミックの前からピリピリしていましたからね。でも、パンデミックで多くの人が限界に達してしまったのだと思います」 モスコヴィッツ氏によると、これは周期的に訪れる現象だ。「自分の身に起きたことを十分に咀嚼しないと、強迫的な行動を取ることや心を閉ざすことが増えます。そして、その状態が長く続けば続くほど、助けを求められなくなります。集団レベルで見ると、状況は2年前より悪化しているようが気がします」 「私たちが自分の中に抑え込んできたものは、自分でも気付かないような、さまざまな形で現れています。例えば、人を信じることができなかったり、ひとりでいたいと思ったり、対面よりも画面越しの“人付き合い”を好んだり。こういった強迫的かつ非社交的な行動を私たちが取るようになったのはトラウマがあるからでしょう」