KOKIAさん、歌に対し正直に「1対1と思って届けたい」 インタビュー前編 坂本真子の『音楽魂』
子育てから生まれた「フクロウ」
KOKIAさんは子育てをする中で、「こんなものがあったらいいな」と思ったものを、音で形にする「ton ton ton」プロジェクトを始めました。動物しばりで曲を書き、動物たちを音楽で表現する「どうぶつの音楽会」シリーズからは、代表曲「フクロウ」が生まれました。 「『フクロウ』は息子という存在があったから書けた歌です。息子が幼い頃は自由になる時間がほとんどありませんでしたが、それでも私は欲張りなのでどうにか仕事ができないかなと思い、息子といるときも、歌につながることを常に考えていました。曲は頭の中でいつでも作れるので」 デザインなどを考えるためにパソコンに向かう時間も減りましたが、「携帯電話を使えばできる!」と発想を転換し、スマホで動物の絵を描くように。これもアニマルシリーズに結実しました。 「子どもの成長とともに、自分の仕事やスタイルをどう変えていくか。自分が全く興味のない世界に息子が興味を持ち始めたら、一緒に勉強して採り入れて楽しむようになりました。『フクロウ』は世界中の方に愛されていますけど、息子がいなかったら生まれなかった曲。子育ての中から生まれたサプライズですね」
「自分を甘やかさないように」
KOKIAさんの澄んだ高音や繊細な歌声を維持するために、どのようにのどをケアしているのでしょうか。そう尋ねると、少し意外な答えが返ってきました。 「25年歌ってきて、風邪をひくときはひくし、体調が悪くなるときもあるとわかったので、今は、特別なことはしていません。もちろん体調が悪いときはマスクをしたりあめをなめたりしますけど、体調がいいときも気にしすぎて守りに入ると良くないので、甘やかさないようにしています」 たとえばライブ会場で、「楽屋に加湿器はいりますか」と聞かれると、「結構です」と断るとも。 「これも持論なんですけど、保湿をしていたところから急に乾燥しているところに行くと、その湿度差で、ものすごい勢いでお肌ものども乾燥します。ステージの上は照明も煙もたいているので、乾燥していて当たり前。すごく加湿された楽屋から急に出たらカラカラになるので絶対しない方がいい、楽屋は普通にしておく方がいいと、ミュージシャンの友達にも言っています」 過去にはオリーブオイルを飲むなど、いろいろ試したそうですが、体調の変化や子育ての影響もあり、現在の考え方に至りました。 「今の私のおすすめは、あまり過敏にならず、うがいをしてお水を飲んでステージに立つという普通のことです。むしろ、ルーティンは排除しています。いつもやることができなくなると、それだけでもうダメかもしれないと気落ちしたり焦ったりするのは良くないですし、どんな状況でも同じように歌えるように。それに、子どもが小さいと自分の思い通りの時間やペースで動けないじゃないですか。ルーティンができなかったときにあたふたするのは良くないと思ったので、ルーティンは排除するようにしました」