KOKIAさん、歌に対し正直に「1対1と思って届けたい」 インタビュー前編 坂本真子の『音楽魂』
【&w連載】坂本真子の『音楽魂』
シンガー・ソングライターのKOKIAさんが、CD2枚組みのベストアルバム「essence -25th Anniversary All Time Best-」を出しました。そのKOKIAさんに、代表曲に込めた思いや音楽との向き合い方、年齢を重ねて感じていることなどを聞きました。前編は新アルバムとそれにまつわる音楽の話について語ります。 【画像】もっと写真を見る(6枚) KOKIAさんは1998年にメジャーデビュー。「ありがとう…」「The Power of Smile」「夢がチカラ」「フクロウ」などの楽曲で知られ、ヨーロッパやアジア各国でも多くのファンに愛されています。2023年に25周年を迎え、24年秋にオールタイムベストアルバム「essence」を発表しました。CD2枚組みで、1枚目は「YELL」(励まし)、2枚目は「HEAL」(癒やし)と名づけられています。 「私は幅広いジャンルの曲を書くので、音楽のジャンルでKOKIAを説明するよりも、励ましと癒やしというメッセージで分ける方がわかりやすいかな、と。励ましと癒やしは表裏一体で、励ましと癒やしの両方があってこそ、前を向いていけるものだと私は思っています」 これまで歌ってきたオリジナル曲は、「今の気持ちをシェアしたい」と思ったときに生まれてきたものだそうです。 「うれしいことも悲しいことも、不思議な風景も、この感動を誰かに伝えなきゃいけない、という衝動に似たものから音楽を生み出してきました」
3度目の録音「25年を経てやっと完結」
KOKIAさんの代表曲「ありがとう…」は、大切な存在との別れを歌った作品。ピアノの弾き語りで録音したデモテープをレコード会社に送ったことがきっかけでデビューが決まった、という経緯がありました。デモテープのシンプルなピアノ演奏をアレンジされ、1999年にシングルとして発表されました。 「アレンジされて世の中に出た曲を思いがけずにたくさんの方に愛していただいて、うれしいことではありましたが、オリジナルはもっとシンプルで、違う音像だったんですね。それなので、オリジナルのバージョンもみなさんにお届けしたいなという気持ちが強くありました」 その願いをかなえる形で2007年、弾き語りでセルフカバーした「ありがとう…(the pearl edition)」を発表。けれども、「思いが空回りしすぎて、思っていたものとはちょっと違う仕上がりになったな、と感じていました」と振り返ります。 それから17年、最初に発売してから25年経って、今回のベスト盤「essence」に「ありがとう…」を収録することに。「そういえば、代表曲なのにミュージックビデオがないね」という話になり、撮影にあたってどの音源を使うかを話し合う中で、KOKIAさんは新たに録音することを提案。再度のセルフカバーが実現しました。 「自分のデビューを決めた曲が、25年の月日を経てやっと完結した感じです。もう2回も世の中に出ていて、たくさんのお客様が好きだと言ってくださっているところに、『こちらはいかがですか』と出すわけですから、『おすすめです』というものを出さなければ納得していただけないですよね。どんな音像にするか、とても時間をかけて調理して、みなさんの好きな『ありがとう…』と、私が追い求めた音像が交差するところで、今回の『ありがとう…』を作りました」 サブタイトルには「KOKIA’s Version」とつけました。KOKIAさんの声の力、歌の力で聴かせるシンプルな構成になっています。 「これが、私がおすすめする『ありがとう…』。25年かけて出来上がったKOKIA印ですので、聴いてください、という思いを込めました」