テクノロジーで家族の時間をつくり出す。ファミリーコンシェルジュ・Yohana代表 松岡陽子インタビュー
弱さを認め、後悔しないこと
──ここからは一問一答形式でお聞きします。仕事は何時にはじめて、何時に終えますか? 朝6時から午後3時まで働き、夕方に再開して夜の8時まで仕事、というスケジュール。午後3時から夕方までは、家族との時間です。 まだ子どもが小さかったころは、深夜3時にはじめて午後3時に終わっていました。子どもが寝ている間に集中して仕事をし、送り迎えやご飯の時間を確保するためです。 ──愛用デバイス、仕事道具は? 一番下の子が去年のクリスマスにプレゼントしてくれた、Ophayaのスマートペン・電子ノートです。 普通のノートのように書き込めるのですが、専用ペンで書いた内容が即デジタル化され、アプリに保存されるので、すごく便利。 我が家ではクリスマスに、くじで決めた相手にシークレットサンタとしてプレゼントを贈るという行事を毎年やっているのですが、一番下の子は私がノートをとるのが好きなことを知っていて、このノートを見つけてくれたんです。 本当はシークレットサンタなので内緒にしなきゃいけないんですが、私に喜んでもらえたのがうれしくて、つい「僕がサンタだったんだよ」と教えてくれたのも可愛かったですね(笑)。 ──情報収集はどのように行なっていますか? シリコンバレーのニュースは、ニュースレターを購読して毎朝チェックしています。あとは一緒に働いたリーダーの方々が、定期的にトレンドレポートを送ってくれます。 本も大好きで、ビジネス書などをオーディオブックで3倍速にして、運転中やジョギング中に聴くようにしています。お皿を洗っているときなど、5分でも聴くクセがあるので、けっこうたくさん読めていますね。 ──能力を伸ばすには? ビジネス力を伸ばすには? 人生はライフロングラーニング(生涯学習)。いつでも学ぶこと、そして学びを楽しむことだと思います。 学生時代は数学と物理ができることが自分の能力だと思っていましたが、今はマネジメントや組織の動かし方、経営にトレンド分析など学ぶべき、そして学びたいことは尽きません。 だから人生は楽しくて面白いし、今も毎日能力を伸ばしている最中だと思っています。 ──余暇の過ごし方は? のんびりするのは苦手なのですが、家族との時間は大切にしています。それができないと仕事にも影響が出てしまいますし。 短時間でも子どもと集中して向き合う時間をつくる。その時間がお互いにとってバケーションになる、という意識が重要です。 ──心が折れたときはどうしますか? 「失敗が重なると成功になる」と思っている人間なので、心が折れることはしょっちゅうです。 その時に大切なのは、自分の悲しさや悔しさをしっかり感じること。「スルーするのは絶対ダメ」とコーチにも言われているので、ときどき布団に隠れて泣いています(笑)。 でも過去を振り返ると、失敗のあとには必ず学びと成長があった。だからこの失敗もきっと乗り越えられる。そう自分に言い聞かせて、前を向いて進んでいます。 ──尊敬する人や憧れの人、好きなアスリートやアーティストは? 『本当の勇気は「弱さ」を認めること』の著者であるブレネー・ブラウン。 弱さを認め、立ち直る過程を研究されている方で、彼女の本を読むたびに泣いてしまうんです。失敗をオープンに語り、そこから学ぶ姿勢は、スタートアップの世界にも通じるものがあります。 一方で、スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのように、自分のビジョンを強引にでも押し通すリーダー像にも惹かれます。私にはできませんが、あのように世界を変えるインパクトを生み出すリーダーシップのあり方からも、学ぶべき点は多いですね。 ──食生活で気をつけていること。好物は? どんなに忙しくても、家族そろって夕食をとること。お互いの悩みを共有し、コミュニケーションする大切な時間です。 好物は納豆とうに。 ──運動の習慣は? どんな運動をされますか? 運動の習慣は大切にしています。 体を動かさないと仕事もはかどらないし、家族にもイライラしてしまう。そういうのを全部取り払ってくれるのが運動なんです。 1日おきにジョギング、その間の日は筋トレ。出張先でも外に走りに出て、リフレッシュしています。 ──座右の銘はありますか。 「No Regret(後悔しない)」。 何かを決断する時は慎重に吟味しますが、一度決めたことには後悔しません。 母が後悔の多い人だったからこそ、自分でコントロールできないことは心配してもしかたないと学びました。 ──ビジネスパーソンにおすすめの一冊は? 自著ですが『選択できる未来をつくる』(東洋経済新報社)を紹介させてください。 私の失敗経験を赤裸々に綴っているので、同じ失敗を繰り返さなくて済みます(笑)。何よりも、この本を通じて、自分で何かを決めていく、つくっていく将来を切り拓ける人になってほしい。「もっと思うように選択していいんだよ!」というメッセージを込めました。 松岡陽子(まつおか・ようこ) 1971年、東京都生まれ。幼少からテニスに打ち込み、16歳で単身渡米。カリフォルニア大学バークレー校を卒業後、マサチューセッツ工科大学に進み博⼠課程修了(理学博士)。ハーバード大学の博士研究員を経て、カーネギーメロン大学助教授、ワシントン大学准教授として、人体・脳のリハビリを促すロボット機器の開発に携わる。2007年「天才賞」と呼ばれるマッカーサー賞を受賞し、その賞金を元手に身体面および学習面の課題を抱える子どもたちのために「ヨーキーワークス財団」を設立。Google Xの共同創業者、QuanttusのCEO、Appleの副社長、Google NestのCTO、Googleの副社長などシリコンバレーにおける要職を歴任。 2019年10月、パナソニック株式会社(現パナソニック ホールディングス株式会社)へ入社。2020年にYohanaをファウンダー兼CEOとして設立。著書に『選択できる未来をつくる』(東洋経済新報社)がある。 Photo: 伊藤圭/Source: Yohana, Amazon
田邉愛理