テクノロジーで家族の時間をつくり出す。ファミリーコンシェルジュ・Yohana代表 松岡陽子インタビュー
テクノロジーではなく人間が中心にある
──松岡さんはMITで博士号を取得された後、カーネギーメロン大学助教授、ワシントン大学准教授を歴任され、そのあとGoogleXやNestで創業に立ち会われました。その間、ご自身で起業したいという思いはあったのでしょうか。 ずっとありました。教授時代にも自分のスタートアップを立ち上げて、自宅でリハビリテーションができるロボットをつくろうとしたのですが、その時はなかなかうまくいかず…。私も教授の経験しかなく、当時はまだWi-Fiのようなインフラが整っていなかったので実用化が難しかったのです。 そのころの私は起業するか、研究に進むかで常に悩んでいました。「人を助けたい」という想いがある一方で、教授職では論文を書くことや学生を指導することが中心でした。 それでGoogle Xのオファーを受けたのですが、そこでの仕事は研究職に近いもの。私としては「もっとお客様に近いものがつくりたい」という気持ちもありました。 その後も、NestでIoT機器「Nest サーモスタット」を1年で開発して市場に出すという無謀なプロジェクトに参加したり、Appleのヘルスケア部門に参画したり。そんな経験のなかで、ちょっとずつ研究者としてのスタンスから離れ、今の自分にたどり着きました。 ──松岡さんはAIとロボットを主軸とする最先端テクノロジーの世界で活躍されてきたわけですが、今回のYohanaでは、テクノロジーだけでなく「人」が直接関わっているというのが特徴的ですね。 テクノロジーと極めて近い世界にいたからこそ、それだけではお客様のニーズに応えられないと気づいたのです。ソフトウェア、ハードウェア、AIに加えて、人間の要素が大切だと。 どうすれば家族に寄り添うサービスをつくれるのか? を突き詰めた結果、テクノロジーだけでも人間だけでもできない部分に焦点を当てることにしました。 AI技術の発展には目覚ましいものがありますが、世界が大きく変わるのはまだ先のことになるだろう、と私は考えます。AIをツールとして使いつつも、まだ人間にもやるべきことがある。 テクノロジー企業は、テクノロジーですべてを解決しようとしがちですが、私はNest時代に、iPodやiPhoneを開発したトニー・ファデルをはじめとするさまざまな方と働き、「テクノロジーを最優先にしてはいけない」ということを学びました。 ユーザー体験を第一に、「ヒューマン・ファースト」なサービス設計をすることが重要なのです。