『交通事故鑑定人 環倫一郎』で有名な漫画家・樹崎聖の『オートモビルカウンシル2024』見聞録「中編:ロータリーエンジンとロードスターと自動車文化」
日本の資産家はヒストリックカーを買って人生をより豊かなものに!そして自動車文化を盛り立てるべし!!
物販エリアに向かう前に休憩がてらお茶でも飲もうと会場の端にあるキッチンカーエリアに歩みを進めていると、樹崎さんが何かに気がついたように声をかけてきた。 「あっ、このジュリアクーペ、さっき通ったときは金額が表示されてたのに、今はSold Outになっていますよ。こっちのポルシェも売れちゃったみたいです」 オートモビルカウンシルには全国の有名ショップが指折りのミントコンディションの車両を出展しているが、展示プレートにプライトが掲げられていることからも分かる通り、その多くが会場での商談が可能になっている。しかも、数百万円~数千万円のマシンがほかのブースを見て回って再び前を通りかかるとSold Outとなっているのだ。 円安や原材料高により物価が高騰する一方で庶民の収入はまるで増えず、経済はスタグフレーション状態……長期低迷を続ける日本経済はますますもって悪化の可能性も懸念されている。そんな世相にあってオートカウンシルの会場は不況知らずの様相で、高価な旧車が飛ぶように売れて行く。 「あるところにはあるもんだねぇ~」と溜息混じりに漏らすと、樹崎さんは「投機マネーの流入で旧車の相場が上がったことは困りものですが、金持ちが趣味としてヘリテージカーを買うの良いことですよ。さらに言えば、手に入れた旧車を良い環境で大切に維持し、定期的にカーショーやイベントなどに参加してファンを楽しませることは立派な文化貢献です。日本の金持ちって銭儲けが目的になっている人が多いじゃないですか。本来は暮らしを充実させ、人生を楽しむためにカネが必要なのに手段と目的を取り違えている。そういう人の多くが、本来は趣味であるはずのクルマにも経済利得性を持ち込み、リセールの良し悪しや節税を重視して新車のアル/ヴェルや4年落ちのメルセデス・ベンツ(普通車は6年で税法上は減価償却となるので4年落ちの中古高級車がもっとも節税効果が高い)なんかを買っちゃうわけです。アル/ヴェルやメルセデスが本当に欲しいのならともかく、せっかく相応の財力を得たのならクルマくらい好きなものを買えば良いのにね。クルマを楽しむくらいのゆとりを生活の中に持てないのは、生活が豊かではあってもどこか心に貧しさを感じてしまいます。そんな人達に比べればオートモビルカウンシルでヘリテージカーを買う人は経済力だけでなく、心にも余裕のある本物の金持ちであり、文化人です。ゆとりのある人はヘリテージカーを買って日本の自動車文化を盛り立てて頂きたい」と語る。 たしかにそうだ。円安によってヒストリックカーの海外流出が続いている昨今、誰かが価値あるクルマを入手し、維持してくれなければ日本から旧車文化が消え去ってしまう。アメリカでもイギリスでもカーコレクターの金持ちは大勢いるし、生活にゆとりが出た人がクラシックカーの研究やレストアなどの趣味に残りの人生を費やす人が少なくない。日本にもそうした趣味人がもっと増えてほしいと思う。
山崎 龍
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