『交通事故鑑定人 環倫一郎』で有名な漫画家・樹崎聖の『オートモビルカウンシル2024』見聞録「中編:ロータリーエンジンとロードスターと自動車文化」
没後30年を迎えたアイルトン・セナ展とNB型ロードスターベースのスペシャルモデル
続いてトヨタ、日産とブースを回る。トヨタはAE86やJZA80スープラのパーツ再販がアナウンスされており、国産メーカーも旧車向けのサービスに前向きになったことを喜ばしく感じた。 日産はS13シルビアやP10プリメーラ、フィガロなどを展示していた。これらの車両は座間のヘリテージコレクションからの出展だろう。自社の歴史的車両の保存という点では、日産は日本メーカーでも一二を争う熱心さと言えるだろう。 続いて、新車と見間違えるほどのコンディションのアルファスッド・スプリント・ヴェローチェとランボルギーニ・カウンタックLP400Sを展示するガレージ伊太利亜のブースの脇を抜けて、主催者展示のアイルトン・セナ展を見るため会場中心へと歩みを進める。 セナがイモラの事故で亡くなってから早30年。今回のオートカウンシルでは、セナが駆ったマクラーレン・ホンダMP4/5B、MP4/6、JPSロータス97Tルノー、ホンダNSXタイプRプロトタイプが展示されていた。筆者も樹崎さんも1980~90年代にフジテレビのF1中継を見て熱狂した世代なので、これらの展示は懐かしい気持ちにさせられた。 駆け足だがこれでひと通り会場を見て回ったことになる。あと見ていないのはミニカーやカーグッズなどの物販ブースだけだ。何か掘り出しものでもないかと店舗が立ち並ぶエリアに向かおうとしたところ、アイルトン・セナ展からそう遠くない場所に1台の見慣れないスポーツカーが展示されているのに筆者は気がついた。 樹崎さんに「アレは何でしょうね?」と尋ねたところ彼は「アストンマーチンっぽくも見えますが、サイズがひと回り小さいし、ディティールもまったく違いますね。ボクにも正体がわかりません」との返答。「ちょっと行ってみましょうか?」と樹崎さんを誘って近づいて行くと、どことなく見覚えのあるフロントスクリーンやドア周りはどことなく見覚えがあることに気がついた。 「わかった! NB型ロードスターのカスタムカーだ!」。マシンの近くにいたスタッフに詳しく話を聞くと、このブースは神奈川県厚木市に店を構えるTAILORで、展示されている車両はロードスターをベースにしたNAOMI(ナオミ)とのこと。車名の由来はデザイナーの奥様の名前から命名したそうだ。 大ヒット作のNA型の影に隠れてNB型はいまいち人気薄だが、前モデルのネガを潰した正当進化モデルだけあって走りはグッと良くなっているし、抑揚のあるボディラインはなかなか美しいクルマだった。ただ、残念なことにナンバーの台座や大きめのドアミラー、使い勝手を重視したドアハンドル、ゴテゴテしたエンブレムなどのディティールの処理がイマイチで、そうしたことが評価を押し下げたきらいがある。 そんなNB型を少しお化粧直しすれば、かようにカッコイイマシンに生まれ変わるということなのだろう。クーペモデルに仕立て直したことでNAOMIの販売価格は800万円となっていた。しかし、ブーススタッフに話を聞いたところ、オープンモデルなら制作費用は車両別で300万円くらいからとなるそうだ。 「ベースとなったNB型は歴代ロードスターの中でも屈指の完成度を誇るマシンですし、ロードスターは古いモデルでもパーツの入手性も良く、構造的にも難しいところがないので旧車ほど維持に手間はかからんでしょう。クーペはともかくオープンモデルなら比較的リーズナブルな価格で、ハンドメイドの美しいマシンが手に入れられるわけですからね。これはこれでアリですね」との筆者の言葉に、樹崎さんは「でも、NB型は完成度が上がったことで比べると面白みが減っちゃいましたよね。たしかにNAOMIのスタイリングは魅力的ですけど、やはりロードスターはボクも所有していたNA型が欲しくなります」と異論を唱える。同じロードスターのファンでもこの点だけは意見の一致を見ることはなかった。
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