ブロックチェーン業界は、現実の人々の真のニーズを見ているか
ブロックチェーン製品を開発し始めた頃、私はよくブロックチェーンはデータベースと言っていた。つまり、世界を救うものではない。 テクノロジー単体で世界を救えることはほとんどない。あらゆるテクノロジーの価値は、それが普通の人々の環境にもたらす機能性と実用性にかかっている。
エレベーターに学ぶ
かつては新しくて恐ろしいと思われていた別のテクノロジーを考えてみよう。エレベーターだ。 エレベーターが今、どこにでもあるのは、人々がその価値を特定のニーズと状況において評価しているからだ。 エレベーターは万能ではないし、昇り降りする唯一の方法でもない。しかし、ほとんどの人がエレベーターを利用し、信頼しているのは、エレベーター業界が、すべての開発者が見習うべき基本的な原則に従っているからだ。 利用者のほとんどは、金属製の箱が垂直空間を移動する仕組みを説明することはできないが、エレベーターが何を可能にしてくれるかは理解している。かつては新しくて恐ろしいテクノロジーだったものが、マスアダプションを経て、議論の余地のないツールになった。 当初、利用者に快適さを提供するために開発された工夫は、一貫した規制と広範な信頼に取って代わられた。 私がエレベーターのような製品の発展を研究しているのは、ブロックチェーンが怖いもの、あるいは取るに足らないものとして認識されないためにはマスアダプションが鍵となるからだ。
製品の内部構造
私は、生まれた場所や金融インフラの欠如、紛争や自然災害など、自分ではコントロールできない要因によって疎外されがちな普通の人たちのために製品を作っている。 このような環境で人々に採用されるには、製品が紛れもなく有用でなければならない。だから私は現在、人道的な現金での支援、国境を越えた給与支払い、政府の社会的プログラム、銀行口座を持たないギグワーカーやクリエイターへの支払いを可能にする支払いプラットフォーム「ステラ・ディスバースメント・プラットフォーム(Stellar Disbursement Platform)」の開発を指揮している。さらには以前、アフリカの難民や移民のためのデジタルウォレット「Boss Money」を作ったのもそのためだ。 おそらく、「現実世界」向けのブロックチェーン製品の開発と発展から学んだ最大の教訓は、ユーザーが気にするのは、製品が自分たちにどのような利益をもたらすかであって、その基盤となるテクノロジーではないということだ。 どういうわけか、暗号資産業界はまだこのことを理解していない。我々は、価値や機能を強調すべきなのに、エレベーターの滑車やレバーに相当するブロックチェーン(テクノロジー)のアピールに時間をかけすぎている。もしブロックチェーン製品が人々の生活を目に見えて快適にしたり、より良くするのであれば、人々はそれを使うだろう。特定のレイヤー1のコンセンサスメカニズムの説明では、人々は決して説得されない。 元起業家である私は、製品の内部構造に飛びつくことが楽しいことを知っている。一方、ルワンダ難民を中心とした私の顧客のうち、そのような内部構造に惹かれたと言う人はいないことも知っている。彼らが我々のウォレットを使う理由は、他の国の人々に送金したり、複数の通貨を保有したり、国境を越えて現金を持ち歩くことを避けることができるからだ。結果が自ずと物語っている。