政府、原発活用の姿勢鮮明に 次期エネルギー基本計画で「依存度低減」の表現見直しへ
政府が年度内に見直す中長期のエネルギー政策の指針「エネルギー基本計画」で、東日本大震災後から明記してきた「可能な限り原発依存度を低減する」との表記を見直すことが12日、分かった。電力の安定供給と脱炭素の両立へ原発を活用する姿勢を鮮明にする。当初は原発に依存しない社会の実現を「党是」とする公明党が表記維持を求めたが、原発活用を進めたい国民民主党や経済界の訴えもあり見直しに踏み切った。 政府は来週にも開く有識者会議で次期計画の素案を示す。原発と再生可能エネルギーを「最大限活用する」と明記。「原発依存度を低減する」という表記は削除し、「特定の電源や燃料源に過度に依存しない」といった表現を盛り込む。 政府は2011年の福島第1原発事故後に依存度の低減を掲げる一方で、岸田文雄政権下の22年に決定した「GX(グリーントランスフォーメーション)基本方針」では最大限活用する方針を明示していた。 2つの表現は矛盾するとの指摘が上がり、次期計画では依存度低減の表記の扱いが焦点となった。次期計画の議論では当初、表記を残す案が浮上。公明が表記見直しに対して強硬に反対し、自民党にも「無理に削る必要はない」(関係者)との意見があったためだ。 だが先の衆院選で自公は少数与党となり、躍進した国民民主と政策協力を模索。電力総連の支援を受ける国民民主の玉木雄一郎代表(現在は役職停止中)は石破茂首相に原発推進を直談判し、政府内で表記削除の方針が強まった。 大量の電力を消費する人工知能(AI)時代には、二酸化炭素(CO2)を排出せず出力が安定した原発が不可欠だとして自民の推進派や経済界も表記削除を求め、公明は現実路線を受け入れざるを得なかった。公明幹部は「党の依存度低減の方針は変わらない。遠い将来には核融合などの新技術も期待できる」と話した。 また、次期計画では原発の建て替えに関し、同じ電力会社なら廃炉が決まった原発の敷地外でも建設できるようにする。GX基本方針では敷地内に限定し、公明は制限緩和に慎重だったが、「原発の総数が変わらなければ党の考えと齟齬はない」として受け入れたようだ。