回転寿司バトルは絶品グルメ化へ!大手に挑む地方からの新勢力
開店前の店をのぞくと、手作業でその日使う鳥の串打ちが行われていた。 多くの居酒屋チェーンが外注に頼る中、この串打ちに毎日5時間を費やすという。丁寧な手焼きにもこだわる。冷凍の輸入肉ではない新鮮な国産鶏肉のおいしさを、最高の焼き加減で届けるためだ。 独自のこだわりを貫き「鳥貴族」を作り上げた「鳥貴族ホールディングス」社長・大倉忠司は、思い切った値上げに踏み切った裏にはこんな思いもあったという。 「海外出店のためアジアやアメリカを頻繁に視察する中、日本は売価も賃金も安いなと。諸外国と価格や賃金を合わせていかなければ日本の将来は暗い。“顧客第一”は他のステークホルダー、特に社員やスタッフに皺寄せがいっていた。価格改定を認めていただけるブランドにしていくことが大事だと思っています」(大倉)
ユニーク珈琲店も登場~外食若手トップたちの格闘
ユニークな新サービスで人気を呼んでいるのが22店舗を展開する「猿田彦珈琲」。こだわりの珈琲で客をつかんできたが、東京・世田谷区の下北沢店では夜7時になるとムーディーな照明が点灯。カウンターにはウイスキーやウォッカが並び、看板には「猿田彦バー」の文字が掲げられた。夜はバーに一変するのだ。上質なコーヒーで作った特製カクテル「コーヒーマルガリータ」(900円)も楽しめる。 客足が落ち込む夜の時間帯に仕掛けた「珈琲バー」。そんなユニークな発想で「猿田彦珈琲」を率いるのが、代表・大塚朝之(42)だ。「頭の中は99%コーヒーの素材と焙煎のことばかり考えています」と言う。最近は世界中のコーヒー農園を訪ねて行う極上のコーヒー豆の買い付けに力を入れている。 「スタバばかりになっていくのは面白くないと思っているので、僕らが存在価値を示したい」(大塚)
大塚が去年整備したのが、本格的なマシンでコーヒーを淹れる練習ができるトレーニングルームだ。 「猿田彦珈琲」のバリスタは去年、「ジャパン ラテアート チャンピオンシップ2023」でトップ3を独占。成果が出始めている。 「会社としてはヒーヒー言っている10数年で、それが生きがい、やりがい、楽しさなので、ずっと続けていけば何かができると思っています」(大塚) 「物語コーポレーション」社長の加藤央之(37)はさらに若い。率いるのは全国に318店舗を展開する「焼肉きんぐ」。業界では後発だったが、テーブルからタッチパネルで注文する食べ放題の新たな業態で急拡大。焼肉チェーンの売上高トップに躍り出た。 2020年、創業者から社長を託された加藤は店舗を回り、徹底した改善活動を続けていた。道路の案内看板の会議でも「この角度でいいのか」などと、驚くほど細かい議論が行われていた。 店舗からメニュー、接客まで、会社一丸となって客をつかむ策を考え続けていた。 「どんどん外食の世界も成熟して、お客様の期待値が高まっている。各社も頑張っているので、どうやって選んでいただける店にするかを、全方位でやっていくことに尽きるんじゃないですか」(加藤) 若い世代の外食経営者たちが熾烈さを増す時代に、全力で挑んでいた。 ※価格は放送時の金額です。 ~村上龍の編集後記~ 昔の話だ。横川竟、15歳、金はないが時間があった。実家で「おれは何をやるべきか」。必ず消費してなくなるものがいい。それは食べもの。桜を7本植える。1本が今も残り「竟桜」と呼んでいる。築地の乾物問屋「伊勢龍」へ。門前払いでも引き下がらず。「商売は嘘をつくな。いいものを売れ。余分に儲けるな」。その後のビジネス人生の原点となる。「すかいらーく」1978年、株価がSONYを超えた。2013年、八王子高倉町に「高倉町珈琲」をオープン。外食のすべてを見てきた。トレンドは作るが、追わない。 <出演者略歴> 横川竟(よこかわ・きわむ)1937年、長野県生まれ。1970年、すかいらーく国立店開業。2006年、すかいらーくCEO就任。2008年、すかいらーくCEO解任。2014年、高倉町珈琲創業。 ※「カンブリア宮殿」より