新型コロナ禍が日本代表強化に打撃…なぜ反町技術委員長は1年延期東京五輪を狙うUー23代表の活動白紙を決断したのか?
そして、下から突き上げる役割を果たすのが、来夏に延期された東京五輪に臨む1997年1月1日以降に生まれた世代となる。しかし、森保監督が兼任するU-23代表の活動に関して、反町委員長は「特に9月を含めた最初の時期では、いまのところ具体的には考えていない」と意外な方針を明かした。 「まずはJリーグに集中してプレーさせたい、と考えています。五輪代表が活動するならIMD(国際Aマッチデー)しかないわけですが、そこで招集をかければ、Jリーグも開催されるなかで各クラブが非常に難しい状況になることは間違いない。試合数も多くなってくるなかで、もっている力を各クラブで発揮した方がベターだと、私もナショナルコーチングスタッフも考えています」 過密スケジュールのもとで再開されるJリーグは、通常はJ1が中断される国際Aマッチデーにも特例で日程が組み込まれている。各クラブで主軸を担っているU-23代表候補も多いなかで、2008年の北京五輪でU-23代表の指揮を執った自身の経験に、五輪本大会が延期される異例の事態を重ね合わせながら、当面はJリーグの舞台で心技体をさらに磨きあげてほしいと反町委員長は期待を込めた。 「1年延びたことによって、頭角を現してくる選手が大勢いるわけですね。私の経験で言えば(北京五輪の)アジア最終予選が終わってからの半年間で、吉田麻也(当時名古屋グランパス)や長友佑都(当時FC東京)が頭角を現し、本大会でもプレーしています。そのような選手がどんどん出てきて、選ぶのに困るほどに分母が増えれば競争力も、チーム力も間違いなく上がると考えています」 再開後の公式戦では交代枠も「3」から「5」に増え、その分だけ若手を含めたすべての選手にチャンスが広がる。U-23代表としての活動は当面白紙になるかもしれないが、お互いを強く意識し合いながらJリーグの舞台で切磋琢磨していくことが、遠回りに映るようで実は強化への近道になる。 Uー23代表の、ひいてはフル代表の底上げにもつながっていく若手選手の台頭をチェックしながら、反町委員長以下の技術委員会はドイツやスペインなど、再開されたヨーロッパのサッカーシーンも映像を介して入念にチェック。状況が整ったときにいつでも招集できる準備を整えていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)