経済低迷でも日本で就職したい…コンビニで働く外国人留学生が抱える本音の背景 #令和の人権
アニルさんはA県での2年間、コンビニに加え、宅配便の仕分け、弁当工場などで週に約50時間以上、夏休みなどは80時間以上も深夜と休日を中心にほぼ毎日働いてきた。アルバイト時間が制限を超えたことが出入国在留管理庁(入管庁)に把握されて帰国させられた知人もいたが、「バレないように」と職場に何度も念を押していた。アルバイト先との交渉の仕方は日本語学校の先輩から後輩へと伝えられていた。 「週28時間でオーケーなのは学費を仕送りしてもらえるちょっとの人だけ。日本語学校は出席が厳しかったから、いつも眠りたかった。今の専門学校の授業料は1年間で90万円くらい。毎月8万円は払わないと辞めさせられる。だから週45時間は働きたい」 アニルさんは家賃や光熱・水道費などを月2万円程度に抑えるため、ネパールの友人3人とアパートの一室をシェアしている。来日前の数カ月間、首都・カトマンズの日本語学校で学んでいたころは「日本に行けばお金を稼げて勉強もできる」「家に仕送りもできる」と夢を膨らませていた。「来日したらうちでアルバイトして」と現地まで勧誘に訪れるコンビニ業者もいたという。 幼児期から英語教育に熱心なネパールでは、留学先の一番人気は英語圏のオーストラリアだが、「自分の英語の成績では留学ビザは下りなかったと思う」とアニルさん。日本の留学ビザは、受け入れ先の日本語学校さえ決まればすぐ取得できた。 「こんなに日本で働かないといけないとは思わなかった。(物価に比べて)時給が安いことも、アルバイトが週28時間以内までというのも知らなかった。(来日時の)借金も残っているし、日本に来たことが良かったのか、悪かったのか。今は分からない。考えても仕方がない。授業料が払えず、借金も返せないまま国に帰った人も多いはず。自殺したネパール人留学生の話も知ってます。私は頑張って(専門学校を卒業して)日本で就職したい」
名ばかり留学生が支える日本 専門家の見解は
コンビニや配送仕分けをはじめ、日本人が少ないアルバイトは時給が安いか、体力を使うかの「単純労働」だ。単純労働は「就労ビザ」の対象外のため、週28時間以内までアルバイトが許される留学生らによって、この国の多くの現場が昼夜を問わず支えられている。 「稼ぎたい留学生」と「人手不足の業界」の両者は一見、良好な需給関係のようだ。業界にとっては人手が足りて人件費も安くすむ。だが、実態としては、出稼ぎ目的で来日した留学生が稼ぐためには「留学ビザ」を取得し更新し続けなくてはならない。そのための学費などは日本語学校、専門学校の4年で約400万円に上り、重すぎる負担となっている。 留学生が「日本に来て良かった」と実感するには、どうすればいいのか。 在日ネパール人に詳しい上智大学総合グローバル学部の田中雅子教授(開発学、国際協力論)は、学費負担の軽減と在留資格の変更の二つに分けて説明する。