【書評】史上最高のメジャーリーガー大谷翔平は何を語ったか:石田雄太著『大谷翔平ロングインタビュー 野球翔年II MLB編2018‐2024』
「フィジカルに技術がマッチしてくるのが30歳から……」
大谷は、MLBの選手として「30歳がピークかな。フィジカルに技術がマッチしてくるのが30歳から35歳くらい」と語っているが、昨年、10勝5敗、ホームラン44本という好成績を挙げ、2度目のMVPを獲得しながらも、また右ヒジの手術に踏み切った。今回も彼はこう考えた。 「150kmまでなら普通に痛みなく投げられた」 「でもそんなの、単純に楽しくない。僕は30歳になっていないし、まだ自分のマックスを目指してみたかった」 「自分で納得できないボールを投げ続けていくことが本当に自分のため、チームのため、ファンのためになるのか……そうではないはずだ」 そして30歳となる今シーズン、大谷はドジャースに移籍し、キャリアハイの成績を残した。WBCでの大谷の活躍ぶりはいまでも語り草だが、出場にいたるまでの事情や本人の思いは本書を読んで楽しんでいただきたい。オフでの過ごし方や「味は二の次」という食生活、結婚、愛犬の「デコピン」についての語り口はほほ笑ましいものだ。 本書には大谷の人間味が溢れている。 「伸びしろでいうと僕の中ではピッチャーのほうがはるかに残っている」 「バッターのほうは(略)太くて強い枝がしっかりできあがっている」と自己分析する大谷。ポストシーズンの活躍に目が離せない。
【Profile】
滝野 雄作 書評家。大阪府出身。慶應義塾大学法学部卒業後、大手出版社に籍を置き、雑誌編集に30年携わる。雑誌連載小説で、松本清張、渡辺淳一、伊集院静、藤田宜永、佐々木譲、楡周平、林真理子などを担当。編集記事で、主に政治外交事件関連の特集記事を長く執筆していた。取材活動を通じて各方面に人脈があり、情報収集のよりよい方策を模索するうち、情報スパイ小説、ノンフィクションに関心が深くなった。