【阪神】岡田前監督の言葉で振り返る プロ野球12球団担当記者が見た2024年
「佐藤は東京ドームだったらホームラン王」
開幕前に『すぽると!』で行った取材、「今年期待する選手は?」と質問すると、「佐藤輝明(25)が伸びしろというか、可能性は一番ある。とてつもなくすごい数字を残す可能性がある。佐藤は東京ドームだったら、ホームラン王を獲る力はありますよ」と底知れぬポテンシャルを認め、「佐藤が一番開幕からスムーズにスタートしてほしいよね」と期待感も口にしていた。 岡田監督がここまで選手への期待感を口にしたのは、このインタビューのときくらいであった。その言葉の裏には、左打者に不利な甲子園球場をホームにしながらも新人から3年連続で20本以上のホームランを放ったポテンシャルを大いに認めるとともに、さらなる成長に期待していたに違いなかった。 そして、佐藤自身も岡田監督からの期待を意気に感じ、2024年シーズンにかける思いは強かった。 ところが、期待とは裏腹に佐藤は6月までわずか3HRと苦しみ、1カ月弱の2軍生活も経験した。 6月のインタビューで岡田監督は「打順は佐藤メインで変えているんですよ。なんとか楽に打たそうっていうか、相手ピッチャーにしても」と、悩める才能の復調を誰よりも願っていた。 結果として、2024年の佐藤の成績は、打率は.268とキャリアハイであったが、ホームランは16本とキャリア最少に終わった。甲子園の風に阻まれるシーンが何度もあり、甲子園でなければと思う打球も何度もあった。 岡田監督の言った「東京ドームだったら…」とは、もちろん佐藤自身も思ったことだろう。 それでも、シーズン序盤は苦しんだものの、8月以降で11本のホームランを放つなど、そのポテンシャルはいまだ計り知れないものがある。いつかホームラン王にと期待を抱かせ続ける才能が爆発するときをこれからも待ち続けたい。
「褒める選手はいない」
10月13日、クライマックスシリーズファーストステージでDeNAに連敗し、シーズンが終了した。 岡田監督の最後の取材はベンチ裏での囲み取材だった。 「この2年間で褒められる選手は?」という質問が飛ぶと、質問に被せるように「いない、いない。そんなのいてるわけないやん。みんなまだまだの選手ばっかりやん」と答えた。 一見すると厳しい言葉に聞こえるが、この言葉に岡田監督の真意と阪神タイガースの未来が詰まっている。 実際にこの2年間で圧倒的な成績を残した選手はいない。野手では打率3割を打った選手も、100打点を超えた選手も、30HRを打った選手もいなかった。 「まだまだの選手」というのは「まだまだこれから伸びしろがある選手」という意味だ。 選手全員が平成生まれと、まさにこれからが伸びざかりの選手ばかり。選手のさらなる成長を願っての最後の言葉だったのだろう。