70年代生まれ団塊ジュニア世代が今なお割を食う事情、一発逆転を狙う「地獄のスパイラル」の行く末
20代前半はまだ楽観的でいられても、20代後半に入り、30代になると、どんどん焦り始めます。非正規雇用だが、一生、正社員になれないのではないか……。そんな不安に大勢が苛まれているところに起こったのが「勝間和代ブーム」「ホリエモンブーム」でした。 折しもリーマンショック(2008年)前夜のプチバブル期で、急にFX投資などを始める人も多かった。あくせく働いて稼ぐよりも投資で年収10倍を目指す。起業して儲ける。自己責任、自己啓発による一発逆転マインドが、2000年代~2010年代の一大潮流でした。
しかし当然ながら、全員が勝間和代になれるわけではないし、全員がホリエモンになれるわけでもありません。夢は早々に打ち砕かれることになり、そこで台頭してきたのが、夢やぶれてくすぶっている一発逆転マインドをカモにするビジネスでした。 たとえば情報商材本を買って読むと、そこには「あなたもこの情報商材を売って儲けましょう」とある。こうして、自分たちがカモにした人間を、今度は誰かをカモにする人間に変えるビジネスモデルがみるみる広まりました。
この構図の中では、カモは一方的な被害者ではありません。「勝ち組」の席を巡って競争している、地獄のような「カモり・カモられ」スパイラルができあがってしまいました。しかし、それも今では変わりつつあるようです。地獄のスパイラルも行くところまで行き着くと世代間の自浄作用が働くのか、今は「自分だけが生き残ればいい」のではなく、仲間を大切にし、助け合いやシェアを重んじる機運が高まっているのです。 平成の世の30年間、ずっと続いてきた「カモり・カモられ」の社会構造から、日本はようやく脱しようとしていると私は認識しています。
■「複雑な世界観」を磨く 本書『全員“カモ”』には「深遠さを装ったデタラメ」という言葉が出てきます。何か深いことを言っているようで、実は中身が空っぽな言葉を信じやすい。重要な判断においても直感的で、分析的な思考に長けていない。そういう人はカモにされやすい。 そこでも思ったことですが、カモにされやすい人は、総じて「単純な世界観」で生きています。前編で述べたような、テレビのワイドショーに出ている「自称・専門家」の言葉を鵜呑みにする、陰謀論にハマる、他人の(しかも大半は運による)成功譚が自分にも当てはまると信じる、書籍の帯の推薦文やECサイトのレビューを妄信する……すべて物事を極端に単純化するクセがあるばっかりに陥る落とし穴と言っていいでしょう。