国内初開催の「On Track Nights: MDC」がスパーク! 大盛り上がりのスタジアムで好タイムも飛び出した
まさに“型破りな陸上イベント”を体現
そして最終種目の男子1500mはお祭り騒ぎになった。ベースメーカーが400mを56秒、800mを1分56秒、1200mを2分56秒で引っ張る。ラストは手拍子でスタジアムがひとつになったのだ。 OACのジェシー・ハント(豪州)が3分38秒98で真っ先にゴールへ飛び込むと、ラストスパートで順位を上げた遠藤日向(住友電工)が3分39秒52で日本人トップ(2位)に輝いた。 優勝したハントは翌日が26歳の誕生日。表彰の後には、スタジアムに「Happy Birthday to You」の歌が響いた。今季最終レースを勝利で飾ったハントは、「歌のプレゼントもしていただいて驚きました」とうれしそうだった。 今回はOnの未発売モデルを初めて着用。ブランド史上初のアッパー製造技術「ライトスプレー」を駆使したスパイクだ。「軽くて薄い。でも包み込まれている感じがして、走りやすかった。これ以上のシューズはないと思うくらいのシューズです」とハントは好感触を得ていた。 日本勢では5000mでのパリ五輪出場を逃がした遠藤が奮起した。 「今季はプレッシャーを感じながら走ることが多かったですけど、この大会は本当に素晴らしい。国内ではなかなか味わうことのできないレースで、走っていて楽しかったです。今日は3分40秒を切れたらいいなと思っていたんですけど、その目標をクリアできました。来年は5000mで東京世界陸上を走るのが目標ですし、12分台を狙おうかなと本気で考えています」と遠藤。今年の秋冬には10000mにもチャレンジする予定で、再び世界を目指して取り組んでいくつもりだ。 緑のうちわがひらめいて、カウベルが鳴り響く。2,893名もの観客が集まり、真夏の夜の〝陸上夏祭り〟となった。 On Track Nights: MDCを共同主催したTWOLAPS代表の横⽥⽒は大会を無事に終えて、充実の表情を見せていた。 「MDCを2021年から始めて、自分たちだけでできた部分と、できなかった部分がありましたが、Onとコラボするかたちでパワーアップできたかなと思います。小さな競技場のなかでの盛り上がり、密度みたいなものを作れたのはすごく大きかったですね。しかも中距離レースだけでここまでできた。非常に意味のあることだと思っています。ただ一回で終わりじゃなくて、やり続けることが大切。もっとお客さんを呼べると思いますし、きっちり育てていきたいです」 1000mレースは「運営で脚が重かった」と完敗したが、中距離イベントとしては大成功だったと言っていいだろう。On Track Nights: MDCは今後もっともっと発展していくはず。この熱狂がさらに広がることを楽しみにしたい。
酒井政人