民間ロケット「カイロス」初号機失敗 宇宙利用“先兵”に厳しい試練
宇宙開発ベンチャー企業「スペースワン」(東京都港区)の小型ロケット「カイロス」初号機が13日、同社の発射場「スペースポート紀伊」(和歌山県串本町)から打ち上げられたが、直後に爆発し失敗した。飛行中断処置が行われたといい、搭載した政府の小型実証衛星は失われた。同社によると負傷者はいない。原因は不明で、飛行データなどを基に今後、解明を進める。日本の民間宇宙利用の“先兵”の一つとして期待されたが、技術の壁を認識する事態となった。
わずか5秒で爆発、政府の実証衛星喪失
カイロスは13日午前11時1分12秒に打ち上げられ上昇したものの、わずか約5秒で爆発。機体の破片が落下し火災が発生した。飛行の中断は、搭載した自律飛行安全システムが作動したため。このシステムが機体の状態や飛行に何らかの異常が発生したと判断し、飛行経路や地上の安全確保のために機体を爆破させたとみられる。
カイロスは3段構成の小型固体燃料ロケットで、全長約18メートル、重さ約23トン。3段燃焼終了後、衛星の軌道投入精度を高めるために作動する液体燃料の推進系「PBS」を搭載している。打ち上げ能力は太陽同期軌道(高度500キロ)に150キロ。
一方、政府の基幹ロケット「イプシロン」は全長約26メートル、重さ約95トンの3段固体燃料ロケットでPBSを搭載可能。能力はほぼ同じ軌道に590キロ(PBS搭載)。スペースワンにはキヤノン電子、清水建設などと共にIHIエアロスペース(東京都江東区)が出資している。同社はイプシロンをはじめ固体燃料ロケット開発や製造に深く関与してきたことから、一回り小さいものの、カイロスには共通する技術要素が多いとみられる。
今回成功すれば、民間の独力では国内初の衛星打ち上げになると期待されていた。喪失したのは、政府の情報収集衛星に不測の事態が発生した際に代替となる「短期打ち上げ型小型衛星」の実証機。運用する内閣衛星情報センターによると、開発費と予定されていた運用費を合わせ約30億円だった。